東アジア地域での役割大きい日本


 東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国に日中韓や米露など計18カ国が参加した東アジア首脳会議(サミット)がブルネイで開かれた。

 中心議題となったのは中国とASEANの一部加盟国とが領有権を争う南シナ海をめぐる問題だった。尖閣諸島(沖縄県石垣市)問題を抱えるわが国も無関心でいられない。

 南シナ海問題で対中牽制

 目立ったのは、南シナ海問題での日中の主張の対立だった。中国の李克強首相は「平和と安定がなければいかなる発展もない」と指摘した上で「当事国以外は口を出すべきではない」と述べた。

 中国の魂胆は、当事国との2国間協議であれば国力に物を言わせて自国の言い分をごり押しできるというものであろう。紛争の国際的討議は米国などの介入を招き、中国の主張の不当性がクローズアップされるという心配が発言の背景にある。

 これに対し、安倍晋三首相は中国を念頭に「地域と国際社会全体の関心事項である」とするとともに「すべての関係国が国際法を順守し、一方的な行動を慎むべきだ」とくぎを刺した。日本のほか10カ国が南シナ海について発言し、うち米国を含む7カ国が安倍首相と同様の内容だった。中国への警戒感を各国が共有していることを意味する。

 ASEAN諸国が望んでいるのは、安倍首相が強調したように国際法による解決だ。南シナ海問題ではベトナムとフィリピンが対中強硬派だったが、中国はベトナムに対しては国家主席らの訪中を通じて懐柔策に出る一方、フィリピンの孤立化を図ることでASEANの分断を狙っている。安倍首相はASEANとの関係強化に全力投球すべきだ。

 ブルネイでのASEAN関連首脳会議は、日本が自らの外交安保政策を各国に説明するまたとない機会となった。日本とASEAN加盟国による首脳会議で、安倍首相は集団的自衛権行使を容認する憲法解釈見直しや「国家安全保障戦略」策定などについて説明したが、否定的な反応はなかった。

 注目されるのは、米中のアジア太平洋地域をめぐるつばぜり合いであろう。6月にシンガポールで開かれたアジア安保会議で、ヘーゲル米国防長官はASEAN諸国の国防相を来年のハワイでの会議に招待した。

 一方、中国は中国・ASEAN首脳会議で「適切な時期に各国の国防相を中国に招きたい」と提案した。さらに、中国は「中国・ASEAN戦略的パートナーシップ10周年共同声明」をまとめる際にも、双方の国防相会議の立ち上げを盛り込むよう求めた。

 その意味で遺憾だったのは、オバマ米大統領が予算不成立で政府機関の一部が閉鎖に追い込まれたため、東アジア首脳会議を欠席したことだ。欠席は2年連続となり、アジア軽視と見られても仕方がないだろう。

ASEANへの支援を

 米中がせめぎ合う中で日本の役割は大きい。まずわが国はASEAN諸国の連携と結束を促し、中国を見据えた海洋安保分野での協力体制構築を支援することが肝要である。

(10月12日付社説)