元社員も『誤報』の指摘、「慰安婦」めぐる「朝日」包囲網
訂正も謝罪も反論もせず
いわゆる従軍慰安婦問題が、日韓の外交問題に発展するきっかけになったのは「朝日新聞」の“誤報”にあったという問題は今年4月26日付のこの欄で一度取り上げた。その誤報とは、「慰安婦狩り」をしたという、元軍人の虚偽証言を報じたり、「金銭で売られた」と語った韓国のおばあさんを「挺身隊として戦場に連行された」と書いたりするなどいくつか指摘されている。
朝日新聞はこれまで訂正も謝罪もしていないが、月刊誌8月号を見ると、この問題をめぐる保守派論壇による“朝日の包囲網”がさらに狭まり、朝日の報道機関としての信頼性に重大な疑問を投げかける格好となっている。
このことは、月刊誌が掲載した論考の多さとテーマを見ただけでも理解できる。まず、「正論」は、「日本を貶めて満足か! 朝日新聞へのレッドカード」と銘打った特集の中で、元朝日新聞ソウル特派員の前川惠司と東京基督教大学教授の西岡力の対談「元朝日ソウル特派員が証言する『慰安婦』報道の錯誤」と、元週刊朝日編集長の川村二郎の論考「我が朝日よ、『慰安婦』で謝るべきは日本ではなく君だろう」を掲載した。また、「WiLL」は、作家の百田尚樹と井沢元彦の対談「反省なき朝日には、不買運動しかない!」、「SAPIO」は巻頭コラムに「“嫌韓ブーム”を生んだのは『どこの誰か』と朝日に問いたい」を載せて、朝日新聞を批判している。
中でも、朝日新聞にとって痛手なのは、内部事情をよく知る元社員が「誤報」を認めるように迫っていることだ。
たとえば、前出の川村は、朝日新聞元主筆の若宮啓文が著書『新聞記者』の中で、1991年に従軍慰安婦問題に火をつけたとされる植村隆・ソウル特派員(当時)の記事には「勇み足があった」と書いていることを紹介した上で、「しかし、これは『勇み足』というレベルではない。取材不足による『誤報』と言うべきではないか」と述べている。
また、「朝日新聞社が今のように詫びるでもなく、慰安婦報道を批判する新聞、雑誌を訴えるでもない。嵐の通過を待つように、ズルズルと結論を先送りするのは、愚の骨頂である」「朝日新聞社はいつからものごとにケジメをつけない会社になったのか」と痛烈なパンチを放つ。
一方、井沢は、朝日新聞がミスしても「絶対に謝らない」理由について、傲慢(ごうまん)な思い込み、とエリート意識の2点を挙げている。そして、「朝日は日本軍や霞が関をものすごく批判していますが、体質は酷似しています」と、こちらも手厳しい。
さらに、百田は「従軍慰安婦問題でも、戦前の日本を否定する何かがほしいと考え、吉田清治の書いた『私の戦争犯罪』という捏造に飛びついた。目的のためなら嘘にも飛びつくわけです」と断罪する。
西岡は「朝日は反論するか訂正するかどっちかにすべきだと思いますよね」と勧めるが、サンドバッグ状態になりながらも自分に都合の悪いことになるとほおかむりを決め込む朝日新聞には、中国の文化と似た体質があるのかもしれない。(敬称略)
編集委員 森田 清策