【韓国紙】選挙前の募兵制公約
米国が徴兵制を実施していた1956年、名門プリンストン大卒業生750人のうち、過半数の450人が卒業後、軍に入隊した。しかし、募兵制(志願兵制)に変わった(1973年)後の2006年には、卒業生1108人のうち入隊したのはわずか9人だけだ。
18~24歳の米軍のうち大学の門をくぐった人は6・5%にとどまっているとの統計もある。マイケル・サンデル米ハーバード大教授が著書『正義とは何か』(邦題、これからの「正義」の話をしよう)で徴兵制は法が、募兵制は経済的な困難が入隊を強制すると書いていたのは、こんな理由からだ。
募兵制については「正義の問題」とともに「予算の問題」も提起される。わが国に募兵制を導入する場合、人件費の負担が現在よりも年間最大7~9兆ウォンほど増えるものと推算される。しかし、人口の推移を考慮すると、徴兵制の改編をひたすら先送りすることはできない。入隊可能な20歳男性の人口が毎年減少しており、徴兵制の維持が困難になる。兵力50万人規模に兵士18カ月服務を基準にして計算すると、25年には予想徴集人員が予想服務人員より8000人足らなくなる。
来年の大統領選挙で“イデナム(20代男性)”票が主要な変数として浮上する中で、与野党の大統領候補たちが争って募兵制の公約を掲げている。与党・共に民主党の李在明候補は徴集兵を15万人規模に減らす代わりに、戦闘副士官(下士官)5万人を増やす選択的募兵制を提案した。国民の党の安哲秀候補は一般兵を減らす代わりに専門副士官を軍兵力の50%まで増やす準募兵制を公約した。正義党の沈相●(「女へん」に「丁」)候補は2030年代から常備兵30万人規模の全面的な募兵制を実施すると言っている。
国ごとに置かれた状況が違うので、徴兵制と募兵制の正答はない。常備軍を持つ全世界164カ国のうち募兵制は93カ国、徴兵制は71カ国だ。南北分断の現実から国家安保が懸かっている問題なので、わが国における募兵制の導入は慎重にアプローチしなければならない。北朝鮮との軍事力の均衡を維持できるかどうかが最も重要な考慮すべき要因だ。
募兵制の導入は相当な期間にわたる公論化と社会的な合意過程が必要だ。大統領選挙の候補者たちが選挙シーズンの“ポピュリズム公約”として浮上したものの、すぐにうやむやになる消耗的な論争だけが繰り返されては困るのだ。
(12月28日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。