イデオロギーの棍棒”時代ではない、韓国の歴史否定する金氏発言
金元雄(キムウォンウン)光復会長は8月15日の光復節祝辞で、「李承晩は親日派と結託し、愛国歌(国歌)を作曲した安益泰(アンイクテ)は民族反逆者」と言った。「韓国社会の対立構造は進歩と保守ではなく、民族と反民族であり、いまだに親日反民族勢力が民族共同体の首根っこを強く抑えている」とも述べた。
ここには赤化統一のために同族間の争いを行った北朝鮮はない。“民族共同体”として包容されているだけだ。彼には“反共主義者”李承晩がたてた自由民主主義体制が“恥ずかしい歴史”と映る。建国大統領と国歌作曲家、初代から21代までの軍参謀総長の全員を“親日反民族勢力”と規定し、これを批判する人々にも同じ帽子をかぶせる。
韓国社会学会会長を歴任した全兌国(チョンテグク)江原大教授はかつて韓国内の理念対立問題で“イデオロギーの棍棒(こんぼう)”という表現を使ったことがあった。
過去の権威主義政府が国民の口を塞ぐために棍棒を振り回したとすれば、今の進歩陣営はその棍棒で敵味方を分けてどちらにつくか選ばせる。韓日貿易対立が炸裂(さくれつ)した時、大統領府の民情首席補佐官(曺国氏)がSNSに“竹槍の歌”をアップし(抗日精神を鼓舞し)、日本軍慰安婦被害者の李容洙さんが尹美香議員の関与した「正義記憶連帯」不正疑惑を暴露した時は、“土着倭寇”(親日派)論議に歪(ゆが)められた。金元雄の主張も同じ脈絡だ。
市場(論理を優先する)保守が優勢だったと評価される李明博政権でも、大統領府の会議に最もよく登場した単語が“従北清算”だったという。朴槿恵政権では保守勢力が強化され北崩壊論が広がり、ブラックリスト(親北文化人・芸能人リスト)が作られた。
国益優先の政策も必要だが、イデオロギーのこん棒を振り回して国民を説得する時代は過ぎた。
未来統合党が約3年ぶりに政党支持率で与党の共に民主党を追い越すことができたのは、市場保守の力を見せたおかげだ。単純に“市場の論理”でなく、マイホームが欲しい欲望、もう少し良い所に住んで資産を取り引きする自由を守るとしたためだ。(政府与党の多くが引っかかっている多重不動産所有問題を追及した)尹喜淑(ユンヒスク)議員の5分発言が国民的共感を得た理由である。
統合党は若者たちが公正なルールで競争して働き口を得る自由、企業が投資して革新する自由、市民・人権団体らが批判して表現する自由など、さらに多くの自由のために戦わなければならない。
進歩陣営が投げ掛ける親日・反日のような古いフレームは極端な勢力の声だけを育てる。極端と極端はお互いを憎悪しながら敵対的共生を企てる。彼らの生存法だ。
よく民心は海と同じで船を浮かべもするが、転覆もさせるという。極端な声では揺れ動く民心を作り出すことができず、動揺する民心を鎮めることもできない。民心はいつも傲慢(ごうまん)な権力に敏感だ。今民心が揺れ動いているならば理由はそこにあるだろう。
(黄政美編集人、8月19日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。