民主党指名争い、バイデン氏に急進左派2氏挑む
20人以上が大統領選に出馬表明した民主党は、中道左派のバイデン前副大統領(76)が一歩リードし、その後を急進左派のウォーレン(70)、サンダース(78)両上院議員が追う展開となっている。
「われわれの民主主義は、金持ちと権力者にハイジャックされている」。ウォーレン氏は、アイオワ州で1日に行われた集会でこう強調。富裕層や大企業を槍玉(やりだま)に挙げつつ、学生ローンや医療費の支払いに苦しむ人たちに寄り添う姿勢を示し、聴衆から喝采を浴びた。
ウォーレン氏は左派層だけでなく、穏健派にも支持を広げつつあり、一時は世論調査結果でバイデン氏を上回るなど勢いを見せている。だが、巨額の財源を必要とする政策はその実現性について疑問視され、他候補から厳しい批判にさらされている。
ウォーレン氏は1日、国民皆保険制度「メディケア・フォー・オール」に必要な予算について、10年間で約20兆㌦と発表。財源は大企業や富裕層への課税、軍事費削減によって賄うとし「中所得層からは1㌣も増税しない」と改めて主張した。
しかし、直後に行ったメディアのインタビューで、バイデン氏は、この計画について30兆~40兆㌦は必要になると指摘。中流階級への増税も不可避との見方を示し、「彼女はごまかしている」と難じた。
一方、バイデン氏は、ウクライナにおける息子ハンター氏の疑惑をめぐりトランプ氏から連日攻撃されていることに加え、世論調査でウォーレン氏からの追い上げを受けて、トランプ氏への攻撃姿勢を強めている。
バイデン氏は先月9日、ニューハンプシャー州の集会でトランプ氏が「嘘(うそ)と歪曲(わいきょく)と中傷」を広めていると批判。「ただでは済まさない。彼は間違った相手に戦いを挑んだ」と述べ、トランプ氏への対決姿勢を露(あら)わにするとともに、自身が「本選でトランプ氏に勝てる候補」であることをアピールした。
予備選が来年2月に迫る中、バイデン氏にとって懸念されるのは、初戦となるアイオワ州や第2戦のニューハンプシャー州の世論調査でウォーレン氏やサンダース氏らの後塵(こうじん)を拝していることだ。1976年以降、この二つの序盤州を落とした候補が指名を獲得したのはクリントン元大統領のみで、先行きに不安を残している。
心臓発作によって一時入院し健康面が不安視されたサンダース氏は先月19日、ニューヨーク市内の集会で「はっきり言うが、私は帰ってきた」と強調。約1時間のスピーチをこなし、健在ぶりを誇示した。
サンダース氏への支持を表明した民主党急進左派の新星、オカシオコルテス下院議員も登壇し、2016年大統領選でサンダース氏が旋風を起こしたことで「米政治を根本的に変えた」と持ち上げた。
支持層が重なるウォーレン氏の勢いに押され気味のサンダース氏は、差別化に苦慮する。
「社会民主主義者」を自称するサンダース氏は、米メディアのインタビューでウォーレン氏について「彼女は資本主義者だというが、私は違う」と主張。もともと自身が提唱した「メディケア・フォー・オール」についてはウォーレン氏より「はるかに進歩的だ」と述べるなど違いを示すことに躍起となっている。
政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、4日現在、世論調査の平均値はバイデン氏が29・1%で首位。これに続いてウォーレン氏は20・6%、サンダース氏は16・6%となっている。
(ワシントン・山崎洋介)






