ペンス氏対中演説、価値観重視の内容を評価


 ペンス米副大統領が「米中関係の将来」をテーマに、およそ1年ぶりとなる対中政策演説を行った。

 この中で、中国による香港の人々の権利や自由の抑制や沖縄県・尖閣諸島周辺における挑発行動などについて「一段と攻撃的になり、不安定な事態をもたらしている」と非難した。国際ルールや人権などの普遍的価値観を前面に打ち出したペンス氏の演説を評価したい。

「監視国家」と痛烈批判

 ペンス氏は、香港情勢について「中国は国際的合意で保障されている香港の人々の権利や自由を奪う行動に従事している」と指摘した。一国二制度を形骸化させている中国への当然の批判だ。

 米プロバスケットボール協会(NBA)のチーム幹部が香港の反政府デモを支持するツイートを投稿した後、釈明に追い込まれた問題に関しては「NBAは(中国の)完全子会社のように振る舞っている」と批判。「米企業は、国内外で(自由や人権尊重など)米国の価値観を擁護すべきだ」とし、中国の「検閲」に屈しないよう求めた。

 ペンス氏は香港のデモに対して「われわれは香港の人々と共にある」述べた。香港市民との連帯を表明し、中国を強く牽制(けんせい)したことを支持したい。

 さらに、ペンス氏は中国による台湾の蔡英文政権への圧力強化を批判。国際社会に対しては「台湾に関与することは平和を脅かすことではない。台湾が民主主義を受け入れたことは、中国のすべての人々にとってよき道標になると固く信じる」と訴えた。台湾と価値観を共有する民主主義国家が、台湾との連携を強めることを期待したい。

 ペンス氏は新疆ウイグル自治区の少数民族に対する弾圧も取り上げた。中国のことを「世界に類のない監視国家」と表現し、中国共産党の一党独裁体制下での強権統治を痛烈に批判したことは実に適切だと言えよう。

 注目すべきは、尖閣問題への言及である。ペンス氏は、中国が尖閣周辺に60日以上連続で公船を派遣したとして「隣国への対応はますます挑発的になっている」と非難した。

 中国は国際ルールを無視して南シナ海で軍事拠点化を進めている。東シナ海でも尖閣領有を虎視眈々(たんたん)と狙っていることを決して忘れてはならない。ペンス氏の演説後も、当て付けるかのように中国公船が尖閣周辺の領海に侵入している。

 日本は現在、中国との「関係改善」を進めている。だが、中国との間には尖閣問題のほか、東シナ海の日中中間線付近で中国が一方的にガス田開発を続けている問題もある。中国での不当な邦人拘束も相次いでいる。安倍晋三首相は、同盟国の副大統領の発言を重く受け止めなければならない。

中国にルールを守らせよ

 ペンス氏は「米国はもはや、経済的関与だけで中国共産党の権威主義的体制を自由で開かれた社会に移行させられるとの望みを持っていない」と強調。中国が法の支配や商取引ルールなどを守るまで強硬姿勢を緩めない方針を明確にした。米中貿易協議でも、こうした方針を最後まで貫いてほしい。