「地理と歴史変える」日韓トンネル 米投資家 ジム・ロジャーズ氏
「世界三大投資家」の一人と称されるジム・ロジャーズ氏がこのほど、世界日報のインタビューに応じた。ロジャーズ氏は、九州北部と韓国南部を海底トンネルで連結する日韓トンネル構想について、日本に大きな利益をもたらすとして積極的に推進すべきとの見解を示した。ロジャーズ氏は9月中旬に佐賀県唐津市にある日韓トンネルの調査斜坑を視察している。(聞き手=編集委員・早川俊行)
対立超え共栄目指せ
有望な日本の農業と観光
日韓の対立をどう見る。

ジム・ロジャーズ 1942年生まれ。米アラバマ州出身。米イェール大学、英オックスフォード大卒。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び「世界三大投資家」と称される。21世紀はアジアの世紀になると判断し、2007年に家族でシンガポールに移住。
まったくばかげている。時間もお金もエネルギーも無駄に費やしている。日本と韓国は共に豊かになるために協力すべきだ。
日韓トンネル構想をどう評価する。
私が知る限り、今世紀で最もエキサイティングなプロジェクトの一つだ。日本と韓国を結び付けることになるからだ。
今は隣の国に行くのに、航空券を購入し、空港に向かわなければならない。しかし、(トンネルができれば)ドライブ気分で向かうことができる。これは日本人と韓国人の考え方を大きく変えるだろう。
日韓トンネルが建設されたら、子供と一緒に東京からロンドンにドライブしたい。その頃には38度線も開かれているだろう。
トンネルが日本にもたらすインパクトは。
この種の建設事業は大量の雇用を生み出す。開通したら、観光や商売をはじめすべての分野を刺激するだろう。
このようなプロジェクトは、人類の歴史でも頻繁にあるものではない。かつては英仏間のドーバー海峡を掘るトンネル工事があった。このようなプロジェクトは地理を変え、歴史を変える。地理は簡単に変えられないが、日韓トンネルはそれを変えるものだ。
日韓トンネルは日本をよりアジアに近づける。これは日本にとって必要なことだ。
構想実現の可能性は。
私は専門家ではないが、エンジニアも地質学者も財務の専門家も可能だと言っている。採算を確保でき、日本も韓国も大きな借金を負わずに済むという話だ。これはインフラ投資では何より好ましい形だ。
実現には高いハードルがある。
日本は現在、多額の財政赤字を抱えている。最も重要なポイントは、この工事が借金を増やさない、子供の将来に重荷を背負わせることはないことをはっきり示すことだ。その上で、商売や貿易などトンネルがもたらす恩恵を説明する必要がある。
このプロジェクトは両国にとって良いことだ。政治家がなぜ積極的に取り組まないのか理解できない。
日本が直面する課題をどう見る。
現在10歳の日本の子供は皆、40歳から人生の最後まで、確実に生活水準が下がっていく。その理由は、国の借金が増え続け、子供の数が減り続けるからだ。もし彼らがこれを理解したら、おそらく「日本を離れたい」と言うだろう。
これは狂った外国人の臆測ではない。借金が増え、人口は減っているという単純な事実、算数の問題だ。
これを乗り越えるには。
日本人は子供をつくるか、移民を受け入れるか、あるいはその両方を実行することだ。私が今暮らしているシンガポールは、50年以上前は沼地で5万人しか住んでいなかった。だが、優秀な人材が移住できるようにあらゆる手だてをした。その結果、シンガポールには現在、550万人が住んでおり、過去50年間で世界でも最も成功した国の一つとなった。
日本で有望な分野は。
農業と観光だ。観光については、日本は長い間、世界の観光マップに入っていなかった。それが今、外国人が大挙してやって来るようになった。ただ、日本には制約が少なくない。例えば、成田空港のATMは、外国のクレジットカードを受け付けないものが少なくない。そんなことは他の国際都市ではあり得ない。
日本は素晴らしい国だ。日本のすべてが効率的で高品質だ。イタリア料理の最高の店は日本にある。日本人が手掛ければ何でも最高のものになる。
京都は言うまでもなく、日本には見事な場所がたくさんある。多くの外国人が訪れたいはずだ。外国人に住みやすく、友好的な社会にしていくべきだ。





