ボルトン氏解任、米国は堅実な外交安保陣容を


 米政権で国家安全保障担当大統領補佐官からボルトン氏が解任された。近く後任指名するトランプ大統領は1期目に3回も同補佐官を代えることになる。国務長官、国防長官も解任した経緯があり、外交・安保の政権陣容を整えて国際問題に対処することが緊要だ。

  タリバンとの協議に反対

 イラン、北朝鮮など敵対的な国々に対し米軍による攻撃を含む強硬策を主張したことで知られるボルトン氏に対し、トランプ氏は「彼の提案の多くに強く反対し、政権の他の人々もそうだった」とツイッターに書き、意見の対立が解任の理由であることを述べた。

 来年の大統領選に向け選挙レースが始まっている米国では、野党民主党が候補者たちの討論会でトランプ氏への批判を戦わせる一方、トランプ氏は決め手を欠き防戦を強いられている。ワシントン・ポスト、CNNなど米主要メディアによる最新の世論調査でトランプ氏の支持率は30%台まで低下した。

 挽回に向けて、内外で打ち出してきた強硬策の成果を必要とするトランプ政権は、同時多発テロから18年目となる11日を前に米国が支援するアフガニスタン政府を脅かす反政府勢力タリバンとの和平協議を模索。タリバンをワシントン近郊の大統領山荘キャンプデービッドに招く計画だったが、ボルトン氏は強く反対したという。

 このことが解任の直接の引き金となったとみられている。トランプ氏にとって、対テロ戦争の契機となった9・11にタリバンとの交渉によって選挙公約であるアフガニスタンからの米軍撤退への道を開くことは、次期大統領選キャンペーンの重要なカードだったに違いない。

 米国では、ブッシュ(子)政権当時に対イラク開戦を主張した国務次官のボルトン氏の印象が強く、今回もボルトン氏が政権を去ったことで軍事行動で人々が命を落とす可能性が低くなったと歓迎する声は保守派を含めて少なくない。6月には、米無人偵察機撃墜への対イラン報復攻撃の10分前に中止命令を出したことをトランプ氏がツイッターで明かしている。

 また2月、ハノイ米朝首脳会談の昼食会が突然中止になり、合意文書調印が見送られたのも、「リビア方式」を主張するボルトン氏の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化を求める原則論が貫かれたためだ。

 トランプ氏はボルトン氏解任後、リビア方式が「米朝交渉を著しく後退させた」と非難した。6月に韓国を訪問したトランプ氏は急遽(きゅうきょ)、南北非武装地帯の板門店で金正恩朝鮮労働党委員長と米朝首脳会談を行ったが、ボルトン氏は反対したと言われている。

 足元を見られかねない

しかし、政権内に原則論に立つ強硬派を加えていたことで、トランプ氏は強い姿勢で「取引」に臨み得たのではないか。

 トランプ氏はイランのロウハニ大統領との会談の用意を示唆し、北朝鮮とも今月下旬に交渉再開の可能性がある。だが、ボルトン氏解任は一種の譲歩として足元を見られかねない。堅実な後任人事によって成果を挙げるべきだ。