次期米統参議長、長期的な対中戦略構築を


 トランプ米大統領が次期統合参謀本部議長に指名したマーク・ミリー陸軍参謀総長が、上院軍事委員会の公聴会で国防戦略について証言した。

 ミリー氏は、中国が今後1世紀にわたり米軍にとって「最大の脅威」になる可能性があるとの認識を示した。米国には、長期的な対中戦略の構築が求められる。

「100年にわたる難題」

 統参議長は米軍制服組のトップであり、大統領および国防長官の主要な軍事顧問である。ミリー氏は上院の承認を経て、10月に退任予定のダンフォード氏の後任となる。

 こうした人物が、中国との長期的な対立を予測したことは、米国にとって中国の脅威がそれだけ高まっていることを物語ると言えよう。

 ミリー氏は軍備増強を続ける中国について「宇宙・サイバー、陸海空のあらゆる領域で極めて急速に軍事力を向上させている」と懸念を表明。「これから50、100年にわたって米国の安全保障にとって主な難題となる」と述べた。

 米軍の優位を維持すべき重点分野としては、核や宇宙などを列挙。音速の5倍(マッハ5)以上の速度で飛行する極超音速(ハイパーソニック)兵器や人工知能(AI)にも言及して「優先的に近代化に向けた投資をする分野だ」と訴えた。

 中国は2018年8月に「星空2号」という極超音速飛行体の試験飛行を行い、高度約30キロの上空をマッハ約5・5で飛行させることに成功した。こうした兵器への抑止力を確保できなければ、米国はもちろん日本などの同盟国にとっても、中国の脅威は格段と高まるだろう。米軍は中国を上回る性能の兵器開発を急ぐべきだ。

 米国の国防戦略を見ると、現在は対テロ戦争に代わって中国やロシアへの対応が最優先課題として挙げられている。中国はアジア太平洋を中心とする第2次世界大戦後の米国の優位に挑戦しようとしている。

 米国防総省が今年5月に発表した年次報告書によれば、中国は西太平洋への米軍の展開を阻む「接近阻止・領域拒否(A2AD)」能力を強化。米領グアムを射程に収める「東風26」や米国の空母を攻撃できる中距離弾道ミサイルの開発を進めていると指摘した。

 一方、中国の習近平国家主席は「一国二制度」による中台統一を目指し、武力行使も辞さない方針を示している。また、米政府は今月初め、中国が軍事拠点化を進める南シナ海で対艦弾道ミサイルの発射実験を行ったことを非難した。アジア太平洋地域の不安定化を防ぐには、A2ADに対処できる米軍の作戦展開が求められる。

日米合同演習の拡大を

 ミリー氏は中国に対抗する上での同盟国との関係について、鍵となるのは「あらゆる分野で演習を行うことだ」と述べた。中国と隣り合わせの日本は、米国との合同演習の拡大などを通じて安全保障面での連携を強化していく必要がある。

 さらにトランプ氏が日米安保条約の片務性を指摘したことを踏まえ、同盟における日本の役割拡大も検討すべきだ。