米「対中危機委」、脅威に対する理解広めよ


 米議会関連の外交政策組織として3月に「現在の危機に対応する委員会:中国」が設立された。米国で浸透工作を行う中国共産党政権の戦略に対して、より強力な外交、防衛、経済措置を取らなければならないと提言している。

共存する希望なしと強調

 こうした「危機委員会」は、米国が直面する危機に応じて設置されてきた。今回の設立は15年ぶり4回目。1950年代、70年代に対ソ連、2004年に対テロ政策のために発足したが、対中国は初めてとなる。

 米国の危機感の強さを反映したものだと言える。危機委の委員には、ブライアン・ケネディ委員長の下にスティーブ・バノン元大統領首席戦略官のほか、国防、政治、宗教の専門家や人権活動家、前政権の情報高官、連邦議会議員、シンクタンクの研究員ら40人以上が加わった。

 委員の一人によれば、米国に対する中国共産党の戦略は、あらゆる手段、軍事、外交、経済、金融、さらにはテロも辞さないというものだ。危機委の綱領では、共産党支配が続く限り中国と共存する希望はなく、米国と「自由世界」を守る手を打たなければならないことが強調されている。中国の脅威を、米国民や政策立案者に理解してもらうことは重要だ。

 一方、トランプ米政権は、中国からの輸入品2000億㌦(約22兆円)相当に対する追加関税を今月10日に10%から25%へ引き上げる方針を明らかにした。米中貿易協議で米国の交渉責任者であるライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、知的財産権侵害を理由に発動した対中関税引き上げに関して「構造問題に対する中国の姿勢が後退した。到底受け入れられない」と述べている。

 中国は、米国企業に対する技術移転強制の禁止、産業補助金の削減、サイバー問題に関わるルール策定や法整備に慎重な姿勢を示していると言われる。危機委は米中貿易協議について「知財窃盗という慣習が止(や)むという約束はまだ見られない」と警告している。

 また、中国政府主導の下での通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)による5G通信技術の拡大に注目して「中国によるインターネットの占拠を見逃してはいけない」と警鐘を鳴らした。4月末の危機委のセミナーでバノン氏は、中国でビジネスを展開する外国企業の強制技術移転、人民元操作、シルクロード経済圏構想「一帯一路」など中国政府の政策がはらむ経済的な侵略性のリスクを解説した。

 中国商務省は劉鶴副首相が今月9、10の両日、貿易協議のため米国を訪れると発表した。米国は中国に一層の構造改革を促す必要がある。

日本も認識の共有を

 危機委では、1970年代の対ソ連危機委の委員でもあった元海軍パイロットのチェト・ネーゲル委員が「過去のソ連と同様に、共産主義の中国は、米国と自由主義に対立するイデオロギーの脅威がある」と強調している。

 日本は現在、中国との関係が改善基調にあるが、同盟国である米国の対中認識を共有した上での外交が求められる。