米宇宙安保報告、中露の脅威に対処する体制を


 米国防総省傘下の情報機関、国防情報局は「宇宙での安全保障に対する課題」と題された報告書で、宇宙空間における中国とロシアの脅威について警鐘を鳴らした。

衛星攻撃兵器に言及

 報告書は中国、ロシア、イラン、北朝鮮の宇宙における戦闘能力を分析し、とりわけ米国の人工衛星が中露のレーザー兵器の標的になる可能性が高まっていると指摘。中露は電子的な戦闘システムやレーザー兵器、ミサイルなどを開発しているばかりでなく、レーザー兵器で人工衛星やそのセンサーの稼働の妨害、弱体化、破壊を目指す公算が大きいと警告した。

 米国の人工衛星は、航空機や船舶の航行システムへの利用、情報収集、ミサイル防衛などのあらゆる分野で重要な役割を果たしている。米軍の主要戦闘システムの大半は全地球測位システム(GPS)が送信する信号に依存しており、GPS衛星が攻撃された場合、壊滅的な影響が予想される。

 米情報機関が中国のレーザー衛星攻撃兵器(ASAT)の配備計画の詳細を明らかにするのは初めて。報告書は、中国が2020年までに低軌道上の衛星のセンサーを攻撃できる地上配備レーザー兵器を配備し、20年代の半ばから終わりにかけて、衛星の構造にまで被害を及ぼし得る高出力のシステムを配備する可能性があることを明らかにした。

 もっとも性能が限定的なものであれば、衛星のセンサーを狙うレーザー兵器をすでに保有している可能性もあるという。中国は07年に自国の気象衛星を標的とした破壊実験に成功し、軍事衛星への高い攻撃能力を示している。

 一方、ロシアは航空機搭載レーザーASATを保有しているとみられる。報告書はロシア航空宇宙軍に「ASATとみられる」レーザー兵器が引き渡されたと指摘し、これは人工衛星が搭載するミサイル防衛用センサーの破壊を念頭に置いたものだと強調している。さらに、地上配備型の移動式ミサイルで宇宙の標的を破壊するシステムの構築も進めており、数年後には運用可能となる見通しだ。

 宇宙空間は国家による領有が禁止されており、国境の概念がないことから、主要国では近年、軍が積極的に関与して宇宙利用を進めている。

 報告書は「中露は今後も、宇宙を近代戦勝利のために不可欠な領域とみている」と指摘。宇宙の軍事技術を向上させるなどさまざまな手段を開発し、米国の宇宙での地位に対抗しようとしていると分析している。

 陸海空では中露に対して圧倒的優位にある米国だが、宇宙空間ではこの限りではない。中露の脅威に対処するための体制を早急に整備すべきだ。

 米国防総省は先月末に「宇宙軍」創設のための法案を議会に提出した。トランプ米政権は中露をにらみ創設を急ぐ構えだ。20会計年度に発足させ、5年間で約1万5000人の体制を整えたいとしている。

日米は連携を強めよ

 日本は宇宙領域でも米国との連携を強化し、抑止力を高める必要がある。