米海軍、目標「355隻」見直しか
無人艦の必要性指摘も
米海軍が一昨年末提案した艦艇「355隻体制」は、世界の海で圧倒的な優位を取り戻すことを目指す米海軍で金科玉条のように見られてきた。しかし、海軍幹部の間で、この「目標」に対する疑問の声が上がり始め、アナリストらからは、小型艦、無人艦の必要性も指摘されている。
海軍制服組トップ、リチャードソン作戦部長は1日、「新たな国防戦略と安全保障環境の変化に鑑み、軍の構成の見直しを進めている」と構造改革の可能性を示唆した。355隻体制を放棄するのかとの質問には、「分析中」と明確な回答を避けた。
トランプ大統領は2017年末、「可能な限り速やかに」355隻とすることを求める国防権限法案に署名、この目標を正式に政策とした。米海軍は現在、284隻の艦艇を保有している。2017年の276隻からは増加したものの、目標にはほど遠い。
しかし、ヘリテージ財団の防衛アナリスト、トーマス・カレンダー氏(退役将校)は昨年10月の報告で、355隻では、二つの「大規模な危機」に同時に対応するには不十分との見方を明らかにした。
カレンダー氏は、39年までに空母を13隻にし、新たに小型戦闘艦19隻を加えるなど400隻にする必要があると指摘、年間40億ドルから60億ドルが追加で必要になると試算している。
だが、予算面から355隻体制の実現すら悲観する指摘もある。
シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)の国防予算分析部長トッド・ハリソン氏は「国家防衛戦略を完全に実行するには妥協が必要」と予算面での制約を強調した。
戦略予算評価センターの上級研究員ブライアン・クラーク氏は、「数を減らしても、優劣に影響はない。これまでの数字は、現在の戦略をうまく反映していない」と指摘した。
同氏によると、ロシア海軍は、北極海で「高性能で、静粛性の高い潜水艦」による作戦に照準を絞り、黒海、カスピ海などでは自衛的であり、近海にとどまる傾向がある。そのため、米軍が、外洋に出ないロシア海軍に対抗するには、小型戦闘艦、無人戦闘艦などが「最も効果的」と主張する。
一方、中国海軍の太平洋海域における米同盟国への脅威は依然として高まっていると指摘。「(中国は)戦力投射能力を徐々に強め、…(南シナ海で)大規模な海軍基地建設を進めている」と警告した。
昨年の調査によると、稼働している中国の戦艦、潜水艦は317隻で、米国を上回っている。
(ワシントン・タイムズ特約)