米ミサイル防衛、宇宙利用で抑止力向上を


 トランプ米政権が、ミサイル防衛の中長期的な指針となる「ミサイル防衛見直し(MDR)」を発表した。

 MDR策定は、トランプ大統領が就任直後に指示していた。費用対効果が薄いとしてミサイル防衛(MD)に慎重な姿勢を示したオバマ前政権下の2010年以来9年ぶりとなる。

中露が極超音速弾開発

 米国のMDはこれまで、北朝鮮やイランなど「ならず者国家」の弾道ミサイルに対する防御に特化してきたが、トランプ政権は弾道ミサイルだけでなく探知が難しい「極超音速」(ハイパーソニック)兵器や新型巡航ミサイルなど幅広い脅威の高まりに対応する防衛技術への投資を通じて、MDシステムを強化することを宣言した。

 オバマ前政権は、米国のMDは中露を意識したものではないと強調していた。従来の方針を転換した背景には、トランプ政権が大国間競争の相手と位置付ける中露両国が開発する新型兵器への危機感がある。

 MDRの構想では、低高度を周回する120~300機の衛星にセンサーを搭載。これにより地理的制約を受けずに、あらゆる場所から発射されるミサイルを探知し、追跡することを目指す。宇宙からレーザー兵器などでミサイルを迎撃するシステムの開発も検討する。

 中露などが開発している極超音速ミサイルは、最高速度が音速の5倍のマッハ5以上で飛行する上、低空を飛行しながら方向転換ができるなど機動性も高いとされる。地上レーダーでの探知は困難で、米軍の既存のMD網を無力化できると指摘される。抑止力を向上させ、中露の脅威に備える必要がある。

 中国は米国攻撃を想定した新型極超音速ミサイルの試験発射を実施し、ロシアも誘導可能な極超音速ミサイルの開発を急いでいる。ロシアのプーチン大統領は昨年末、核搭載可能な極超音速ミサイル「アバンガルト」発射実験の成功を誇示し、19年中に配備されると宣言した。

 MDに詳しいグリフィン米国防次官(研究・技術担当)は、これらのミサイルに対抗するには「宇宙なくしては不可能だ」と主張している。トランプ氏はMDRについて「宇宙は新たな戦場だと理解している」と強調した。

 またMDRは、日本も導入する最新鋭ステルス戦闘機F35をMDにも活用する方針を示した。国防総省ミサイル防衛局はミサイル迎撃実験にF35を参加させ、その有用性を実証する計画。搭載された最新鋭のセンサーで上空からミサイルを監視する役割のほか、新型の迎撃ミサイルによるミサイル撃墜を視野に置く。日米両国にとって朝鮮半島付近のミサイル対策の強化につながると考えられる。

 このほか、弾道ミサイルを発射直後の上昇段階で撃ち落とす高出力レーダーの研究も進めるとしている。

迎撃強化で同盟国を守れ

 トランプ氏は自らが提唱する「宇宙軍」と合わせ、宇宙空間での取り組みに力を入れる。

 MDに宇宙空間を活用して迎撃態勢を強化することで、米国本土や同盟国を守ることが求められる。