相次ぐ誤報に批判の嵐

トランプVSリベラル・メディア(1)

 米紙ニューヨーク・タイムズやCNNテレビなどの主要メディアとトランプ大統領の「戦争」は収まる気配がない。昨年の大統領選では偏見があったためトランプ氏の勝利を予測できなかったと批判されたメディアだが、相変わらず左に傾いた報道を隠そうとしない。偏向が続く米リベラルメディアを改めて考察する。(ワシントン・岩城喜之)

「ロシア疑惑」で株価急落
裏を取らない「盲目報道」の指摘も

 「メディアが記事を訂正したのを見たか。彼らは一年中間違った記事を出しているが、決して謝らない。弁護士を雇って提訴しろ」

トランプ氏

12月4日、米ホワイトハウス前でトランプ大統領を取材する報道陣(UPI)

 今月8日、フロリダ州ペンサコーラ。トランプ氏は支持者を集めた集会でいつものように痛烈なメディア批判を繰り返した。

 主要メディアとトランプ氏の対立は大統領選中から続いているが、12月上旬はこれまで以上に激しい展開を見せた。大手メディアの誤報が1週間のうちに立て続けに起こり、批判の嵐にさらされ防戦を余儀なくされたからだ。

 まず1日にABCテレビが「昨年の大統領選中にトランプ氏からロシア政府と接触するよう指示されたとフリン前大統領補佐官が証言する用意がある」と報道。事実ならトランプ氏とロシアが共謀して大統領選の結果に影響を与えようとした「ロシア疑惑」が大きく動き、大統領の弾劾にもつながりかねない内容だ。このためニューヨーク株式市場では株価が急落した。

 だが、すぐに誤報だったことが分かり批判が殺到。同テレビは取材内容の確認作業が甘かったことを認めて「深刻な誤りで遺憾だ。謝罪する」とし、担当記者を4週間の停職処分にした。

 また8日にはCNNテレビがトランプ氏長男のトランプ・ジュニア氏に関するニュースに誤りがあったとして訂正。5日にはロイター通信やブルームバーグ通信の「ロシア疑惑」に関連した報道にも間違いがあった。

 さらにワシントン・ポスト紙の記者が8日に行われたトランプ氏の集会について、参加者が少ないとして空席が目立つ会場の写真をツイッターに掲載。しかし、これは集会が始まる数時間前の写真を使っていたことが発覚し、トランプ氏に人気がないよう見せるためにわざと載せたと批判され、謝罪に追い込まれた。

 こうした誤報が立て続けに起こったことについて、ミスがたまたま続いただけと擁護する声は多い。トランプ氏が毎日のようにツイッターで「フェイク(偽)ニュース」と批判する内容も、すべてがそれに当てはまるわけではないからだ。

 一方で、トランプ政権になってから大統領に関連したメディアの誤報が多くなっているとの指摘もある。

 そうした状況を弁護士でウェブメディア「パワーライン」創設者のジョン・ヒンダラーカー氏が「トランプ氏に関するリベラルメディアの嘘(うそ)を数える仕事があったら、それは超人的な仕事になる」と皮肉ったほどだ。

 ワシントン界隈(かいわい)では、昨年の大統領選後からトランプ氏に関する不確かな情報や文書が出回っている。同氏を攻撃したいあまり、取材がおろそかになったり、不確かな情報をそのまま報道してしまうケースがあるなどメディアの「劣化」も囁(ささや)かれている。

 ワシントン・タイムズ紙で12年間ホワイトハウスを取材したジョゼフ・カール記者は「今やメディアが怒りと憎しみで盲目になり、取材した内容が本当かどうか裏を取ったりチェックすることがないまま記事にしている」と批判。トランプ氏の追い落としを画策して虚偽の情報を流している人がいる可能性を指摘し、「恐ろしい誤報が続く背景を調査する必要がある」と訴えた。