「社会の分断」助長する報道

 「多様性の尊重」を説きながら、自らの考えに沿わない主張や保守派の価値観に対しては、レッテル貼りして非難する――。米リベラルメディアには、こうした批判が根強くある。

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4月15日、米カリフォルニア州バークレーで衝突するトランプ支持者と反トランプ活動家(UPI)

 保守系雑誌「ニュー・アメリカン」のウィリアム・ジャスパー上級エディターは、メディアが人工妊娠中絶や同性婚に反対するキリスト教徒たちを一方的に非難しているとし、「リベラルメディアは保守派の価値観を悪魔のように扱っている」と主張。米金融情報提供会社「インベスター・ビジネス・デイリー」も「大手メディアは、地方に住む米国人を古くさい宗教的信念に固執する、ばかな田舎者とみている」と批判する。

 他にもメディアによる保守派へのレッテル貼りは多数ある。例えば、草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」を「テロリスト」扱いしたり、キリスト教福音派系団体「家庭調査協議会」を「ヘイト(憎悪)グループ」だと決めつけたりした。ワシントン・タイムズ紙のコラムニスト、チャールズ・ハート氏によると、オバマ元大統領の横柄さを指摘しただけで「人種差別主義者」だとメディアから糾弾されるケースもあった。

 こうした偏向は他国の報道にも影響を与えている。特に日本メディアは、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト両紙のほか、NBCテレビをはじめとした3大ネットワークやCNNテレビなど主に米リベラルメディアの報道を参考に記事を書くため、必然的に日本のニュースもリベラルな視点が多くなり、バランスを欠いたものになる。昨年の米大統領選で、日本の報道機関がトランプ氏勝利を予想できなかったのも、米メディアの報道を疑問視せず、そのまま伝えたからだ。

 一方、メディア監視団体「メディア・リサーチ・センター」(MRC)は「大統領がメディアと同じリベラルな考えなら、ジャーナリストはホワイトハウスを応援するが、リベラル側の思想に反する大統領が選ばれると、獰猛(どうもう)な(闘犬用の犬種)アメリカン・ピット・ブル・テリアに変身し、大統領とその政策を攻撃するようになる」と主張。こうしたダブルスタンダード(二重基準)ともいえる姿勢が信頼の低下どころか、保守派の怒りを招いていると指摘する。

 実際、メディアの報道により保守派とリベラル派の対立が深まっているとの見方は多い。

 レーガン元大統領のスピーチライターを務めたペギー・ヌーナン氏は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のコラムで、「メディアは挑発的で怒りを煽(あお)っている」と強調。そうしたニュースに刺激された人が暴力的になっている現状を紹介し、メディアの報道姿勢に疑問を呈した。

 またリベラル派に不利な情報を隠したり報道しないことに対しても、保守派の反発は強くなっている。

 こうした米国社会の現状を、FOXニュースの番組で司会を務めるグレッグ・ガットフェルド氏は、次のように批判する。

 「社会の分断が深まっているのは、それを助長するリベラルメディアにも責任がある」

(ワシントン・岩城喜之)

=終わり=