トランプ大統領 「米国第一」で繁栄できるか


 ドナルド・トランプ氏が第45代米大統領に就任した。就任演説では「米国を再び強く、豊かにし、誇り高く、安全で偉大な国にする」と述べた。米国の再生を目指すトランプ大統領の強い決意を示す言葉であった。

 民主党のオバマ大統領が任期満了で退任し、8年ぶりの共和党政権誕生である。

国民の結束呼び掛ける

 トランプ氏は「われわれは一つの心、一つの家、そして一つの輝かしい運命を共有している」と語り、国民の結束を呼び掛けた。

 オバマ政権下で深まった米国社会の亀裂は、昨年の大統領選で一層深刻化した。民主党議員60人以上が大統領就任式をボイコットし、ワシントンではトランプ氏への抗議デモも行われて一部が暴徒化した。分断を修復することは急務であり、呼び掛けは当然のことだ。

 今回の大統領選は、トランプ氏の過激なメッセージに、既存の政治に嫌気が差す中間層が共鳴し、かねて富の不均衡に不満を持つ白人労働者が強い支持基盤となったことが大きな特徴であった。トランプ氏当選はオバマ政権の負の遺産が一挙に噴き出したものだ。

 こうした選挙戦での勝利を意識し、トランプ氏は「ワシントンからあなた方国民に権力を戻す」と語り、「忘れられた人々が、これ以上忘れられることはない」と強調した。

 トランプ氏は自国の利益を最優先する「米国第一主義」を高らかに宣言した。具体的には、貿易、移民、外交などに関する全ての決定は「米国の労働者や家族に利益をもたらすために下される」と述べ、式典直後に環太平洋連携協定(TPP)離脱を宣言した。

 しかし米国の政策が引き金になり、世界に保護主義が広がることが懸念される。自由貿易を推進し、世界の経済を活性化させることが、米国民の雇用増大につながることを忘れてはならない。

 外交・安全保障に関して「われわれは従来の同盟関係を強化し、新しい関係をつくる」と述べ、「われわれは団結して過激なイスラムのテロに対抗し、この地球上から撲滅する」と明言した。トランプ氏は「米国の軍事力は強化すべきだ」と言ってはいるが、オバマ氏同様、米国が「世界の警察官」であり続けることはできないと主張してきた。軍事力行使をためらうオバマ氏を、紛争関係国は弱腰外交と揶揄してきた。

 実業家として名を成したトランプ氏は、政府・軍の職務経験のない初めての大統領として、経済はもとより政治、外交での手腕、具体的行動が問われることになる。

日米同盟は地域の公共財

 日本は米国の同盟国として、在日米軍駐留経費の負担増を求められることも予想される。

 ただ、日本は2016年度に駐留経費7600億円を負担している。在日米軍基地はアジア太平洋地域における米軍の拠点として米国の世界戦略を支え、米国の国益にも寄与している。こうした事実とともに、日米同盟が地域の安定に貢献する公共財であることをトランプ氏に説明し、理解を得る必要がある。