対キューバ外交、米は民主化に結び付けよ
米国はキューバと54年ぶりに国交を回復することで合意した。オバマ米大統領は議会に対し、キューバに科している経済制裁の解除に向けて速やかに対応するよう訴えた。両国の対立は「冷戦時代の遺物」扱いされていたが、それが解消されたことを歓迎したい。
54年ぶりに国交回復
1959年のキューバ革命で米フロリダ州の目と鼻の先に共産主義政権が誕生したのは米国にとってショックだった。さらにソ連がキューバにミサイル基地建設を計画し、米国がミサイル配備を阻止しようとして海上を封鎖した62年のキューバ危機で、世界は核戦争の危機に直面した。
このような歴史的背景を考えると両国の国交回復の意義は極めて大きい。米国にとって、1000万人を超える人口を抱えるキューバは、市場としての魅力も高い。
今後の課題は国交回復をキューバの民主化にいかにして結び付けるかだ。米国内では「時期尚早」だとして反対論も強い。共和党のベイナー下院議長は「キューバ国民が自由を手に入れるまでは、関係を正常化すべきではない」という声明を発表している。
キューバ系移民の家庭に生まれ、来年の大統領選挙に立候補している共和党のマルコ・ルビオ上院議員は、声明で「オバマ政権は譲歩に譲歩を重ねた」と述べた上で「キューバ国民の政治的自由が保障されるまで、駐キューバ大使の人事の承認に反対し続けるつもりだ」と強調した。共和党の最有力候補と目されるジェブ・ブッシュ氏も、自身のツイッターで「大使館の再開は、キューバ政府による国民の抑圧を正当化するものだ」と批判した。
オバマ大統領は議会にキューバへの経済制裁を解除するように求めているが、以上のような反対論に加え、米議会は上下両院とも野党の共和党が多数を占めているので、早期に応じるかは不透明だ。
国交が回復し、米キューバ両国は月内にも双方の首都に大使館再開の運びとなろう。だが、米国の対キューバ制裁の中には米議会の同意がないと解除できないものが多い。しかも米議会が解除の条件としているのは、権力を握っているカストロ国家評議会議長らの引退などであり、キューバ側が到底飲める内容ではない。
次に認識すべきは、米キューバ雪解けのグローバルな意義である。その点で注目されるのはロシアと中国の動きだ。昨年7月にプーチン・ロシア大統領と習近平・中国国家主席が相次いでキューバを訪れて親交を深めた。キューバをはじめ中南米諸国には「北の巨人」である米国への反感が強い。これを利用してロシアや中国が積極的にこの地域に勢力を浸透させようとしている。米キューバ両国の国交回復はこれらの動きに歯止めを掛ける点で貴重な一歩となることが期待される。
人権状況改善に努めよ
米国が経済制裁を解除するには、キューバ側としても国内の人権状況改善などの努力が必要であろう。米国内の対キューバ不信の壁は高いからである。
(7月6日付社説)