米与野党は政府機関閉鎖の長期化を避けよ


米国では2014会計年度(13年10月~14年9月)暫定予算の不成立が確定し、連邦政府機関の一部が閉鎖された。
予算をめぐる与野党の話し合いが平行線に終わったためだ。与野党は事態の長期化を避けるため、妥協点を探らなければならない。

行政サービスが縮小

米国では政府機関閉鎖という異常事態は過去に17回起きており、今回はクリントン政権時代の1996年1月以来、17年9カ月ぶり。クリントン政権時には過去最長の21日間閉鎖されたが、今回はそれに匹敵する日数になる可能性がある。
閉鎖によって、全体で200万人を超える政府職員のうち少なくとも82万5000人が自宅待機となった。安全保障、司法警察など緊急性を要する分野以外の行政サービスが縮小されている。

首都ワシントンでは、国立博物館、美術館なども閉鎖され、ゴミ収集事業などにも支障が出るとみられている。長期化すれば米国の経済や社会に計り知れない悪影響が及ぶことは疑いなしである。

こうした事態を招いたことの根底には、与野党間の埋め難い溝がある。予算協議で取り上げられた医療保険改革法(オバマケア)は10年に成立したが、野党共和党はこれまで幾度となく廃止や延期を求めてきた。

大きな政府を掲げる与党民主党はオバマケア実現による社会保障の充実を訴えてきた。一方、できるだけ税金を減らし、政府が支出する額が少なくて済む政策を考える共和党にとっては、オバマケアはいわば目の上のたんこぶでもあった。

歴代の民主党政権ができなかった国民皆保険制度の確立こそ、オバマ大統領の強い意向でもあった。このためオバマ政権は共和党指導者との相談、根回しもなく、専ら民主党を相手にオバマケア成立を図ってきた。政府機関の一部閉鎖をもたらした共和党の反撃は、共和党無視のツケが今となって表れたものだといえる。

17日には連邦債務が上限を超え、デフォルト(債務不履行)に陥る危機が迫っている。与野党対立の構図は、債務上限引き上げ交渉でも変わる見通しはない。連邦政府の債務の上限が法令で定められている米国では、上限に達する時期になると、次の上限額をめぐって議論が活発化する。

現在の債務残高は16兆7000億ドルの上限にほぼ達しており、17日までに議会が上限を引き上げないと、連邦政府の資金繰りが行き詰まり、すでに発行済みの米国債の利払いが滞る。小さな政府を目指す共和党はデフォルトを避け、オバマ政権になり上昇が著しい債務残高の上限を低く抑えたいというのが本音である。

オバマ氏の指導力に衰え

オバマ政権は2期目に入ったが、銃規制強化や移民制度改革などでも与野党の妥協点が見いだせない事態が続き、オバマ大統領の指導力の衰えは否定のしようがない。世論調査での支持率低下がこれを如実に示している。これがこのまま続くのか。オバマ大統領は今、重要な岐路に立っている。

(10月4日付社説)