日米同盟の双務性を向上させよ


 日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)が都内で開催され、防衛協力のための指針(ガイドライン)の見直しで合意した。

 東京での2プラス2に米国の国務・国防両長官が出席したのは初めてだ。

領海侵犯繰り返す中国

 発表された共同文書では、中国を念頭に「海洋における力による安定を損ねる行動」を厳しく批判。その上で、中国に「地域の安定と繁栄に責任ある建設的な役割を果たし、国際的行動規範を順守、軍事上の透明性を向上させるよう促す」と明記している。

 日本がアジア太平洋地域で海洋進出を続ける中国に対応するには、世界最強の海軍力を持つ米国とともに強い姿勢を示すことが必要であり、今回の2プラス2の成果を歓迎したい。

 沖縄県・尖閣諸島周辺で中国の公船がわが物顔で領海侵犯を繰り返しているが、このままではいつ偶発的な衝突が起きてもおかしくない。

 われわれは、まず中国の異常な行動を批判したい。さらに、その時どのような防衛態勢が取れるのか――ガイドラインの見直しは不可欠だ。

 忘れてならないのは、米政府が日本の役割分担の明確化を求めていることだ。米政府は財政悪化のため従来のように同盟諸国の防衛に全責任を負える状況ではない。

 シリア情勢を含め中東は世界の「火薬庫」として不安定であり、米政府は対応を迫られている。そこで米政府は、中国の軍事力拡大や北朝鮮の核・ミサイル開発などに有効に対処するため、オーストラリア、韓国、日本との「同盟のトライアングル」の強化を進めている。

 日米同盟の弱みは、米国が日本防衛の責任を負う一方、日本に米国防衛の義務はないという片務性だ。安倍政権が集団的自衛権行使の容認に向けて動き出したのは、双務性を高めない限り、同盟の深化は望めないという憂慮からである。

 例えば日本が攻撃されていない段階で、公海上で米軍艦船が攻撃された場合、その近くにいた自衛隊艦船が米軍を応援できないとすれば、米国内で批判が高まり、日米同盟は「死に体」の状態となろう。

 残念なのは、わが国では集団的自衛権の行使を違憲とする解釈がまかり通っていることだ。だが、憲法は国を守るためにあり、「憲法守って国滅ぶ」の状況は本末転倒である。

 憲法9条によって、わが国は自衛のための必要最小限の防衛力を持つことしか許されない。他国が攻撃された場合に他国を守るのは9条に違反するというのが従来の解釈だ。これを改め、早急に必要な法整備に乗り出すことが求められる。

 日米同盟の信頼性向上には“お互いに助け合う”ことが欠かせない。今回の米国の国務、国防両長官の来日には、日本が東アジアの安全保障で応分の負担を担うことへの期待が込められている。

米国の事情に配慮を

 安倍政権は米国の国内事情にも配慮し、今回の2プラス2合意に基づいて日米同盟強化に向け主体的に動くべきである。

(10月5日付社説)