日米韓の連携が北朝鮮に対する抑止力の中心


 北朝鮮はこのほど、韓国の朴槿恵大統領を名指しで批判する声明を発表した。朴大統領がミサイル防衛システムの早期構築などを通じて「北朝鮮の政権が執着する核とミサイルがそれ以上、役に立たないことを自ら認識させる」と述べたことに反発したものだ。

寧辺の原子炉再稼働か

 北朝鮮は声明の中で、朴大統領に対して「われわれの体制転覆を狙うなら墓穴を掘る」と牽制。「朴槿恵も政治家なら世の中を正しく見極め、格に見合った無駄口をたたくべきだ」と非難した。9月には離散家族再会の延期を発表しており、南北関係が再び冷え込む可能性が出始めている。

 声明はまた、「(自国を)強くて繁栄した国にするため、核兵力(強化)と経済建設の並進路線を変わりなく進めていく」と述べ、核兵器開発を続ける考えを改めて表明した。この路線は核兵器を軍事力の要と位置付け、同時に国防費を抑えて経済再建を図るものだ。

 だが北朝鮮の核兵器開発は、国連安全保障理事会決議に違反するものであり、決して許されない。開発が続けば、特に日米韓3カ国にとって深刻な脅威となる。

 北朝鮮核問題に関しては、北京で先月開かれたセミナーで、北朝鮮の核交渉責任者、金桂冠第1外務次官が前提条件なしでの対話を要求。これに対し、日米韓が「北朝鮮の非核化に向けた行動が対話の前提」という原則を崩さなかったのは当然だ。

 米ジョンズ・ホプキンス大コリア研究所は9月に撮影された衛星写真の解析結果を基に、北朝鮮の寧辺にある5000キロワットの黒鉛減速炉の排水施設から熱水が排出されており、原子炉再稼働と電力生産を裏付ける新たな証拠だと発表した。

 寧辺の核施設は6カ国協議の合意に基づき稼働を停止していたが、北朝鮮は4月に再稼働を表明。減速炉の使用済み核燃料を再処理すれば、年間で核兵器1個分に当たる6キロのプルトニウムを生産できる。実際に再稼働されたのであれば、6カ国協議の再開など無理な話だ。

 北朝鮮の非核化を実現するには、中国の影響力行使が欠かせない。中国は先月、核兵器など大量破壊兵器に転用される可能性があるとして北朝鮮への輸出を禁止する物資・技術のリストを公表した。中国は安保理の対北朝鮮制裁決議を順守していないとの批判も根強くある。禁輸を厳格に実行し、北朝鮮に核放棄を迫るべきだ。

 北朝鮮の核・ミサイル開発を踏まえ、日米両国は防衛協力のための指針(ガイドライン)を2014年末までに見直すことで合意した。また、ヘーゲル米国防長官と韓国の金寛鎮国防相は、ソウルで定例の安保協議会を行い、北朝鮮による核や大量破壊兵器に備えた「カスタマイズ抑制戦略」を完成させたことを発表した。

 日韓は関係改善に努めよ

 問題は日韓だ。両国関係は領土や歴史認識問題などをめぐる対立で極度に冷え込んでいる。

 日米韓の連携強化は北朝鮮への抑止力向上の中心となる。日韓両国は関係改善へ粘り強い努力を続けるべきだ。

(10月6日付社説)