中国・新疆の太陽光パネル 米国で懸念高まる
強制労働の疑い、対応求める声
中国の新疆ウイグル自治区における太陽光パネル素材の生産に、中国政府による強制労働が関わっている可能性があるとして米国で懸念が高まっている。バイデン政権が太陽光発電などの再生可能エネルギーの推進を図る中、人権問題が浮上した形で、今後厳しい措置に踏み切るか注目される。(ワシントン・山崎洋介)
近年、中国の太陽光産業は世界における市場シェアを急速に拡大。中でも、太陽光パネルの原料、ポリシリコンの生産において中国は8割以上を占め、このうちイスラム教少数民族ウイグル族への弾圧が問題となっている新疆ウイグル自治区で、世界の約半数を占めていると推定される。
ウイグル族への強制労働は世界で批判が高まっており、米国はトランプ前政権下で中国の新疆ウイグル自治区で生産された綿製品などが強制労働によって作られた疑いがあるとして輸入を禁止。バイデン政権が太陽光発電の推進を図る中、中国の太陽光関連産業における人権問題にも注目が高まっている。
米メディアによると米戦略コンサルタント会社ホライゾン・アドバイザリーは、中国のポリシリコンメーカー大手5社が、新疆ウイグル自治区で強制労働に関与している可能性を指摘。これらの企業が、中国政府によるウイグル族の移送や国家への忠誠心を植え付けるための軍事訓練に関わっているとみられるという。
8人の共和党上院議員は3月30日、中国から太陽光関連製品を購入するために連邦予算の使用を禁止する法案を提出。このうちリック・スコット上院議員は、同法案によって「米国は習近平共産党総書記に対してジェノサイド(集団虐殺)と人権侵害に目をつぶらないという明確なメッセージを送る」と強調した。
懸念は党派を超えて広がっており、ジェフ・マークリー上院議員(民主党)は3月23日、マルコ・ルビオ上院議員(共和党)とともに、米業界団体の太陽エネルギー産業協会に書簡を送り、米国の太陽光産業が新疆ウイグル自治区のポリシリコンなどの関連製品にどの程度依存しているかについて情報提供を求めた。
さらに、全米最大の労働組合で民主党の支持基盤の米労働総同盟産別会議(AFL-CIO)のリチャード・トラムカ会長は3月中旬、ブリンケン国務長官とサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)への書簡で、新疆ウイグル自治区において「太陽光関連製品の生産において、体系的に強制労働が行われている説得力のある証拠」があると主張。同自治区からポリシリコンなど太陽光関連製品の輸入を禁止するよう求めた。
中国における太陽光パネル生産については、強制労働の可能性だけでなく、環境基準の緩さや劣悪な労働条件などの問題も指摘されている。
バイデン政権が輸入禁止などの措置に踏み切ればコスト増などにより太陽光発電の普及を促進する政策を妨げる可能性がある。一方、新疆ウイグル自治区における少数民族弾圧についてジェノサイドと認定したトランプ前政権の判断を引き継ぐなど人権問題を重視する立場を示しており、バイデン政権がどう対応するか注目される。