EV普及で対中依存深化か、バイデン米政権が推進


 バイデン米大統領は、電気自動車(EV)の普及に意欲を示しているが、充電池の製造と、原材料となるレアアース(希土類)供給で世界的に大きなシェアを占める中国の影響力を強めるだけでなく、米国の対中依存が強まると懸念されている。

 バイデン政権は民主議員らとともに、インフラ整備法案を推進、「米国製」EVの普及に少なくとも1740億㌦を充てる方針だ。バイデン大統領は、「米経済の競争力を高め、中国との世界での競争に勝つ」とEV推進に意欲的だ。

 しかし専門家は、EVの普及が中国を利する可能性があると指摘する。シンクタンク、エネルギー研究所のダン・キッシュ上級研究員は、「現在、EV用バッテリーの製造は中国がリードしている。米国がEVに転換するために必要な資源と技術を中国が支配している」と指摘、米国経済の中国への依存が強まると懸念を表明した。

 中国は2019年、EVに使用される世界のリチウムイオン充電池の72%を製造、米国はわずか9%だ。

 中国は、30年までに107のリチウムイオン充電池大規模工場を建設する予定で、現在、少なくとも53工場が稼働している。それに対し米国は3工場にすぎず、EV普及が進めば、対中依存が強まるのは不可避だ。

 また、EV用充電池製造に必要な希土類(レアアース)の大部分を中国が製造している。

 USAレアアース社のビニ・アルサウスCEOは、「中国のサプライチェーン(供給網)がなければ、EVの製造に必要なリチウムは手に入らない」と指摘した。

 英調査機関「ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス」の19年の報告によると、中国は充電池に使われるレアアースの80%を製造している。

 中国は世界のEV製造をリードしており、18年の世界のEVの60%が中国製だ。

 アルサウス氏は、バイデン政権のEV普及策について、「いいスタート」を切ったが、対中依存を終わらせるための取り組みを大幅に強化させる必要があると強調した。

(ワシントン・タイムズ特約)