「安全軽視の人体実験」 中露のワクチン外交に非難の声
米国内で新型コロナウイルスのワクチン接種が進められる一方で、ロシアと中国が「ワクチン外交」を展開している。中露のワクチンは安全基準が疑問視されているが、欧米などの先進国が大手製薬のワクチンを確保する中で生まれた空白を利用し、世界での影響力拡大を狙っている。
インドネシアは11日、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)の緊急使用を承認した。一方、ロシアは昨年12月、ワクチン「スプートニク」30万回分をアルゼンチンに送った。ロシア直接投資基金は11日、パレスチナ自治政府保健省がスプートニクを登録し、今年初めのうちに運び込まれることを発表した。
基金のCEOキリル・ドミトリーエフ氏は「欧州、アジア、中南米に加え中東でもスプートニクが使用されることは喜ばしいことだ」と述べている。
ニューヨーク大学医療倫理部長のアーサー・カプラン教授は、「ロシアと中国はワクチンを政治的ツールとして使い、アフリカ、中東の貧しい国で信頼を得ようとしている。その先にあるのは天然資源だ」と指摘した。
米シンクタンク、ハドソン研究所のパトリック・クローニン・アジア太平洋安全保障部長は「中露は、世界の研究所をハッキングし、プロパガンダを垂れ流した上で、今度はワクチン外交を始めた。国内の抑圧的で残忍な統治への非難を逸(そ)らすためだ」と訴えた。
だが、ワクチン開発段階で先進国がワクチン確保に奔走する中で開いた空白を両国が埋めているという側面もある。ドイツの調査会社スタティスタによると、昨年12月時点で、米、英、オーストラリア、日本、スイス、イスラエル、欧州連合(EU)など豊かな国の人口は世界の14%だが、ワクチンの初期の供給の53%を確保している。
一方、科学者らからは中露のワクチン開発に対する懸念の声も聴かれる。「カプラン氏は、「満たすべき安全性、透明性が確保されないまま、他国にワクチンが配られている」と指摘、「切羽詰まった状況を逆手に取った、いわば人体実験だ」と非難した。
(ワシントン・タイムズ特約)