米グーグル提訴 独占の実態を明らかにせよ


 米司法省と11州は、米グーグルが検索サービスで競争を阻害しているとして、反トラスト法(独占禁止法)違反で同社を首都ワシントンの連邦地裁に提訴した。

 公正な競争を実現するためにも、裁判で独占の実態を明らかにする必要がある。

優位な立場で競合を排除

 訴状は、グーグルがスマートフォン用基本ソフト(OS)「アンドロイド」を無償で端末メーカーに提供する代わりに、検索エンジンの事前搭載などを要求していると指摘。米アップルのブラウザーでも検索エンジンを標準設定とする契約を結び、競合社が参入しにくい環境をつくっていると批判した。グーグルが検索エンジンの高いシェアを利用し、検索連動型広告で支配的な地位を築き上げていることも問題視している。

 司法省は、グーグルの検索が「インターネットの入り口として、とてつもない力を持っている」と強調。消費者の選択肢が減り、プライバシーやデータ保護などを含む「質」に悪影響を及ぼしていると判断した。これに対し、グーグルは「人々は自らグーグルを選んで使っている」と反論。全面的に争う構えだ。

 GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)と呼ばれるIT大手4社に対しては、各サービス分野で優位な立場を利用して競合を排除しているとの批判が強い。アマゾンは、外部出店者のデータを競合製品の開発に利用していると報じられた。フェイスブックは、写真共有アプリ「インスタグラム」の買収が潜在的な競争相手を排除する狙いだったとして問題視され、米議会ではIT大手に対する規制強化が提案された。

 4社に対しては司法省や連邦取引委員会(FTC)などが調査を進めており、訴訟の動きは今後も続く可能性がある。訴訟をきっかけに規制が強化されれば、公正な競争が行われて技術革新も進み、消費者にとって利益となろう。

 巨大IT企業が本拠を置く米国はこれまで、反トラスト法の行使に慎重だとされてきた。今回の提訴の背景には、米国内の格差が拡大したことで、巨額の利益を稼ぎ出す巨大IT企業への不満の声が高まっていることもあるようだ。

 グーグルをめぐっては、FTCが2011年、ネット検索などで競合相手を不利にしたなどとして、反トラスト法に基づく調査を始めたが、提訴は見送られた。当時のオバマ政権とグーグルとの関係が深かったため、政権の介入によって提訴されなかったとも言われた。

国際協力で規制強化を

 欧州では既に、欧州連合(EU)欧州委員会がグーグルに対して、EU競争法(独占禁止法)に違反したとして、17年に約3000億円、18年に約5700億円、19年に約1900億円の制裁金を科している。

 日本では今年5月、巨大IT企業による取引の透明性向上を促す法律が成立した。政府はデジタル広告規制の導入も検討しており、公正取引委員会が関連業界を調査している。規制強化に向けた国際社会の協力も求められる。

(サムネイル:Wikipediaより)