エネルギー計画 原発の新増設を打ち出せ


 経済産業省は3年に1度のエネルギー基本計画見直しに向け検討を始めた。電力の安定供給には安価で温室効果ガスを排出しない原発の活用が不可欠だ。

出力が不安定な再エネ

 エネルギー基本計画は電力や燃料資源に関する政府の中期的な方針を示すもので、内容は3年ごとに見直し、必要に応じて改定する。現行計画では、2030年度の電源構成を火力(石炭・石油・液化天然ガス)で56%、再生可能エネルギーを22~24%、原子力は20~22%とする目標を掲げている。

 温室ガス削減を求める声が各国で強まる中、日本は火力発電に依存している。18年度の実績は火力が77%で、再エネは17%、原子力も6%にとどまる。

 日本は地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」で、30年度の温室ガスの排出量を13年度比で26%削減する国際公約を示している。温暖化を食い止めるには、これ以上火力に頼ることはできない。

 菅義偉首相は26日召集の臨時国会冒頭で行う初の所信表明演説に、温室ガスの排出量を50年に実質ゼロにする新たな目標を盛り込む方針を固めた。河野太郎規制改革担当相は水力、風力、太陽光など温室ガスを排出しない再エネの普及に向けた規制撤廃に取り組む考えだ。

 ただ、再エネは日照時間や風量などで発電量が左右され、出力が不安定という弱点がある。日本は再エネ発電に適した遠浅の海岸や広大な平野に乏しいこともネックだ。コストが高いことも大きな課題で、再エネの普及費として12年度以降、年平均2兆円程度が電気料金に上乗せされてきた。

 再エネを使いやすくする蓄電池の技術革新や送電網の充実などを地道に進めていくことは重要である。しかし、現時点で再エネに過度の期待をかけることはできない。

 一方、やはり温室ガスを排出しない原発は、現行計画で安価に一定量を発電し続けられる「ベースロード電源」と位置付けられている。電力の安定供給には欠かせない存在だ。

 33基ある原発のうち、東京電力福島第1原発事故以後に再稼働したのは9基にすぎない。これは国民の原発への不信感を払拭(ふっしょく)できていないことを示している。このままでは原子力の割合を20~22%とする目標達成は難しい。政府は再稼働を進めるとともに、新たな計画では原発の新増設も打ち出すべきだ。

 東北電力女川原発(宮城県石巻市、女川町)2号機について、県議会は本会議で再稼働を求める請願を賛成多数で採択し、再稼働容認の姿勢を示した。村井嘉浩知事も同意に踏み切る見通しだ。再稼働すれば、東日本大震災で被災した原発としては初となる。再稼働の広がりにつながることを期待したい。

一層の安全性向上を

 政府と日本原燃の再処理工場がある青森県は、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策を進める方針を確認した。資源に乏しい日本にとっては不可欠な政策で、このためにも原発再稼働の推進が求められる。

 原発に対する国民の理解を広げるには、安全性向上への一層の取り組みも欠かせない。