テレビ討論会 リーダーシップ観察の機会に


 11月3日の米大統領選まで残り2カ月を切った。佳境を迎える選挙戦のハイライトは、正副大統領候補によるテレビ討論会である。

 大統領候補者によるテレビ討論会は3回、副大統領候補の討論会は1回開かれる。今回の大統領選では、共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領の討論会が9月29日、10月15日、22日、共和党のペンス副大統領と民主党のハリス上院議員の討論会は10月7日に行われる。

失言多いバイデン氏

 民主党の政策綱領はオバマ前政権時代への回帰と左派への迎合であり、口当たりは悪くないが新鮮味を欠く。これに対し、決して一枚岩とは言えない共和党は、自由、家庭、秩序など伝統的価値の訴えが波及するか、今後の推移を見なければならない。そのためにも、テレビ討論会の意義は大きい。

 トランプ氏が4月以降、旗を振ってきた経済再開路線は、新型コロナウイルスの感染再拡大で頓挫の感がある。一方、過激な反人種差別デモが続く地方都市に連邦治安要員を派遣するなど「法と秩序」の回復をアピールしている。

 バイデン氏は7月、「より良き再建を」をスローガンに製造業復活への巨額投資を発表したが、財源確保策となると明確さを欠く。自宅の地下室でのインターネットやテレビ出演が多く、テレビ討論会ではトランプ氏と互角の勝負を展開できるか不安視する向きもある。

 「新型コロナにより、米国では1億2000万人以上が死亡した」「2007年以降、1億5000万人が銃で亡くなった」など数字の誤りをはじめ失言や物忘れ、言い間違いが著しいことから、メディア、有権者の間ではバイデン氏の「認知症」疑惑に関心が高まっている。テレビ討論会は、バイデン氏が大統領としてのリーダーシップを発揮できるか観察する機会だ。

 トランプ氏が中国をバイデン氏攻撃の中心テーマにするのは間違いない。今でこそ対中強硬姿勢が見えるバイデン氏であるが、大統領選出馬表明直後の昨年5月、「中国は米国とは勝負にならない」と述べ、中国の脅威を過小評価した。

 ハリス氏は民主党候補の第1回討論会で、バイデン氏が1970年代に人種別学校の撤廃・統合を目指したバス通学プログラムに反対したことを取り上げてバイデン氏を攻撃した。バイデン氏との相性、価値観の相違を指摘する声も強い。

 民主党が重視する医療保険改革で急進左派が提唱する「国民皆保険」を一時支持し、自らを「民主社会主義者」と形容するサンダース上院議員ら左派への配慮をのぞかせた。しかし、党綱領案では国民皆保険への支持は表明されなかった。ハリス氏の発言のブレを見逃すことはできない。

両候補の政策見極めたい

 米大統領選では、3回のテレビ討論会での政策論を聞き、パフォーマンスを見て、投票する候補を決める有権者が多いとされる。

 有権者には、テレビ討論会でそれぞれの政策を見極めることが求められる。