米大統領選 中国問題が主要争点に浮上


 11月の米大統領選で、中国問題が主要争点の一つとして浮上している。

米国民の対中感情悪化

 与党共和党では再選を狙うトランプ大統領が、政権奪還を目指す野党民主党ではバイデン前副大統領が候補指名獲得を確実にしている。トランプ、バイデン両陣営は、互いの対中姿勢が「弱腰」で中国をのさばらせていると批判を強めている。

 背景には、米国民の中国に対する感情の悪化があることを指摘しなければならない。米調査機関ピュー・リサーチ・センターが4月に公表した世論調査結果によると、中国に対し「好意的ではない」との回答が66%に上り、2017年の同じ調査の47%から約20ポイント増加した。「好意的」とする回答は過去最低だった前年と同じ26%。また、71%は「中国の習近平国家主席を信頼できない」とし、62%が「中国の国力と影響力は重大な脅威」と回答した。

 中国は長年にわたって米国の知的財産を奪い、米国など外国企業が中国で事業をする条件として技術移転を強制し、米企業が中国経済のさまざまな部門で競合しないよう国営企業に補助金を与えてきた。こうした中、トランプ陣営や共和党では、米国経済の悪化を招いた新型コロナウイルスの感染拡大の原因は中国政府にあるとして、中国政府の責任を問う声が強まっている。その上でバイデン氏に対し、中国寄りで弱腰だと批判を強めている。

 トランプ陣営の政治団体「アメリカ・ファースト・アクション」は4月、「北京バイデン」というウェブサイトを立ち上げるとともに、勝敗の鍵を握るとみられる接戦州ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの3州で、バイデン氏が中国寄りだとアピールするテレビ広告を流して攻撃を強めている。

 これに対してバイデン陣営も「真実を隠すために、ネガティブキャンペーンを実施している」と反撃を開始。新型コロナへの対応をめぐって「トランプ氏は1~2月の間に中国を15回讃(たた)えた」と指摘するなど、当初示していた中国への配慮が対策の遅れを招いたとするテレビ広告を流した。

 トランプ陣営は「バイデン氏が勝てば中国に再び付け込まれる」と主張し、バイデン陣営は「トランプ氏こそ独裁的な国家に甘い」と強調。両陣営の間で批判の応酬となっている。

 大統領選は再選を目指す現職が一般的に有利とされる。新型コロナの感染が拡大する中、投票率が低迷し、熱狂的な支持者がいるトランプ氏が有利になる展開も想定される。

 もっとも、民主党予備選を延期したり、取りやめたりする州が出てきていることから、大統領選をこれまでのように実施できるか危ぶむ向きもある。感染拡大は選挙の行方にも大きな影響を与えそうだ。

正念場のトランプ氏

 トランプ氏は、感染拡大を受けて「戦時の大統領」として危機に立ち向かう姿をアピールしている。新型コロナへの対応は、トランプ氏の指導力が問われる重要テーマである。大統領選へ向け、正念場を迎えていると言えよう。