先住民絶滅危機に保護の訴え
ブラジル写真家 著名人らが賛同
ブラジル出身の世界的写真家セバスチャン・サルガド氏(76)は1日、アマゾン熱帯雨林に暮らす先住民族を新型コロナウイルスによる絶滅危機から保護するように求める公開書簡を、ブラジルのボルソナロ大統領に送付したことを明らかにした。ブラジルのフォーリャ紙が2日付で報じたほか、英ガーディアン紙など欧米各紙が報じている。
サルガド氏は、公開書簡で「500年前、ブラジルの先住民はヨーロッパ人が持ち込んだ疫病によって絶滅寸前にまで追い込まれた。先住民に新型コロナウイルスに対抗するすべはなく存続の危機に直面している」と主張。ボルソナロ氏に対して、先住民保護区に無許可で入り込んでいる採金者や違法伐採業者を取り締まるように求めている。
また、公開書簡を支持するように求めるオンライン署名も行われており、4日までに歌手のマドンナやポール・マッカートニー、俳優のブラッド・ピットなどの著名人を含む20万人からの署名が集まっている。署名の発起人はサルガド氏と妻のレリアさん。
ブラジルには、約80万人の先住民族が住んでいるが、すでに近代文明から孤立した生活様式を保っていることで知られる孤立先住民族にも、新型コロナの感染が確認されている。
先住民族の多くは保護区で生活し、文明との接触が少ない部族も少なくない。そのため、伝染病に弱く、1970年代にははしかやマラリアの流行で多くの命が奪われた。
経済成長を優先し、アマゾン熱帯雨林と先住民族の保護に消極的なボルソナロ政権下では、環境・先住民保護に対する予算が削減されている。最近では、先住民の環境保護活動家が殺害されるなど、先住民の存在はこれまでになく脅かされているのが現状だ。
サルガド氏は、労働や難民問題、環境破壊などを扱った作品で世界的な評価を受けている写真家。世界銀行のコンサルタントとして、アフリカで農業指導に当たったこともある。現在は、ブラジルの先住民族を題材とした作品を発表している。
(サンパウロ 綾村悟)