新型コロナで中露が反米プロパガンダ
米国務省でロシア、中国など外国からの偽情報対策を担う「グローバル・エンゲージメント・センター(GEC)」の責任者、リー・ガブリエル特使はワシントン・タイムズ紙とのインタビューで、新型コロナをめぐる情報操作への対策を強化していることを明らかにした。ロシアは1月にすでに、新型コロナをめぐるキャンペーンを開始、中国も米国発生説を流すなど、偽情報による米国の信頼喪失へ活動を強化している。
米国務省は対抗策強化
ガブリエル氏は「中国は新型コロナに関する世界的な認識を覆そうと全面的な攻勢に出ている」と述べ、ウイルス発生源としての汚名を米国など他国に着せようとしていることを強調した。
中国外務省の報道官が12日、ツイッターで、新型コロナは米軍が中国に持ち込んだ可能性があるという根拠のない情報を流したばかりだ。
また、新型コロナ危機を逆手に取って「対応に失敗した民主主義体制に対する中国共産党の優位性」を訴えることで、「中国は善、そのほかはすべて悪」というイメージをつくり出そうとしていると指摘した。
GECが新型コロナをめぐる情報への監視を強めたのは、ロシアが1月に、ウイルスはマイクロソフトの創設者ビル・ゲイツ夫妻が創設した「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」や米政府の研究所で作られたものとの偽情報を流し始めたため。そこには、ソーシャルメディア上の架空のアカウントだけでなく、ロシア政府系のスプートニク、RTなどのニュースメディアも関わっていたという。
また、発信された偽情報を中国、ロシア、イランのメディアが互いに取り上げることで、「相互に効果を強化し合っている」と、3カ国が連携している可能性を指摘した。
別の米政府高官はワシントン・タイムズに対し、中国報道官の12日のツイートは「国務省内の上層部での転換点となった」と述べ、この問題をめぐるプロパガンダを阻止するために本格的な取り組みを開始したことを明らかにした。
ただ、一度流れた偽情報に対する「特効薬はない」とガブリエル氏。「うその説明に対抗する最良の方法」は、事実に裏付けされた信頼できる情報を発信していくことだと、長期戦の構えであることを強調した。
GECは、オバマ前政権時の「戦略テロ対策コミュニケーションセンター」が前身で、トランプ政権下でロシアなどによるソーシャルメディアを使ったプロパガンダに対抗するために設置された。国務省の中でも秘匿性が高く、職員の数も公開されていない。
(ワシントン・タイムズ特約)