専門家がトランプ政権の外交に警鐘
アフリカでテロ脅威が拡大
シリア、イラクで基盤を失った過激派組織「イスラム国」(IS)は、北アフリカのサヘル地域で再組織化され、テロ攻撃を激化させている。専門家らは、米国が、この地域で拡大するテロの脅威に対処するための軍事介入を弱めることで、重大なリスクを冒していると警告している。
ISによるとみられるサヘル地域でのテロが今年に入って頻発している。11日にニジェールで軍の基地を襲撃し、兵士71人を殺害、ISが犯行声明を出した。11月にはマリでテロ組織と軍が衝突し、兵士50人以上が死亡。アルジェリア、ブルキナファソでも同様の襲撃事件が起きている。フランスが数千人の兵力を駐留させてテロ対策に当たり、欧州各国も軍事プレゼンスを強化しているが、政情が不安定なこの地域で、効果的な対応はできていない。
米軍もテロ対策に関与しているものの、現地の軍への訓練、助言などにとどまっている。米政府は昨年、アフリカ駐留軍を今後2年間で6000人から5400人に削減することを発表、アフリカへの軍事的関与を縮小していく方針を明確にしている。
トランプ政権は、アフリカや中東でのテロ組織ではなく、中国とロシアを米国にとっての最大の脅威と見なしており、専門家らは、アフリカ撤収の動きも、この外交政策を受けた措置だとみている。
しかし、ISやアルカイダなどのテロ組織が、その力の空白を突いて地域で勢力を拡大する可能性があり、専門家らは、米国の現在の戦略は危険であり、現状を見る限り、危機は現実のものとなっていると指摘する。
米戦略国際問題研究所(CSIS)の「国境を越えた脅威プロジェクト」のセス・ジョーンズ所長は「現在の米国家防衛戦略、テロ対策から中露との競争への安全保障戦略のシフトを見ると、…米国はリスクを冒そうとしている。特に西アフリカが危険だ」と警鐘を鳴らす。
シンクタンク「国際危機グループ(ICG)」は、「聖戦主義の影がギニア湾に到達し西アフリカを襲っている」と指摘、ブルキナファソなど政治的、体制的に特に脆弱(ぜいじゃく)な国が、アフリカ西岸の国々の安定への脅威となっていると指摘した。
(ワシントン・タイムズ特約)