米パリ協定離脱、危機感持ち温暖化対策強化を


 トランプ米政権は地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を正式に国連に通告した。来年11月に行われる大統領選の翌日に当たる4日に離脱が完了する。

 米国の離脱は残念だが、日本を含む国際社会は温暖化対策を着実に進めていくべきだ。

猛暑や自然災害が深刻化

 パリ協定離脱はトランプ氏が掲げた選挙公約の一つ。大統領選が1年後に迫る中、政権の実績としてアピールする狙いがあろう。

 この協定は2015年末に開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択され、16年に発効した。世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑えることを目標に掲げている。

 だが、パリ協定も完全なものではないことに留意する必要がある。温室効果ガスの削減を目指して1997年に採択された京都議定書は、中国やインドを含む途上国に削減義務がなく、これを嫌った米国も離脱した。

 一方、パリ協定は、全ての国に削減目標の提出を求める代わりに、目標達成を義務化しないことで、米中をはじめ多くの国の合意を得たのが特徴だ。このため、対策の実効性が低下したことは否めない。国連環境計画(UNEP)によると、各国が温室ガスの削減目標を達成しても、今世紀末までの気温上昇は約3度に達する。

 今年7月にパリで観測史上最高の42・6度を記録するなど、温暖化の影響とみられる猛暑や自然災害が深刻化している。日本でも、大型で強い台風の襲来が相次いで各地で大きな被害が出た。国際社会は危機感を持って対策強化を進めるべきだ。

 政府は6月、パリ協定の目標達成に向け、温室ガスの排出量を大幅削減するための長期戦略を決定した。この中で、二酸化炭素(CO2)を回収し、燃料や建設資材として再利用する「カーボンリサイクル(CCU)」や、地中や海底への貯留(CCS)などの技術の確立や普及の推進を掲げている。燃やしてもCO2を出さない水素エネルギーの活用拡大に向け、製造コストの低減も打ち出した。こうした対策を早期に実現するとともに、途上国への技術支援を拡大することも求められる。

 このほか、CO2の最大1万倍超の温室効果がある代替フロンの大気放出も防がなければならない。世界の排出推計量は17年の約8・5億㌧から30年ごろには約20億㌧まで増加すると言われている。各国が連携して対策に取り組むべきだ。

 ただ、こうした対策を講じても一定程度の気温上昇は避けられない。高温に強い農作物の品種改良や洪水を防ぐための堤防整備など温暖化への適応策も併せて進める必要がある。

原発再稼働を進めよ

 日本は温室ガスを30年までに13年比で26%削減する目標を掲げている。達成には、温室ガスを排出しない原発の再稼働を進めることも求められる。

 政府はエネルギー基本計画で30年の電源構成における原発の比率を20~22%としている。これには30基程度の再稼働が必要となる。原子力規制委員会は円滑な審査に努めるべきだ。