高校生らに「公開授業」、露大統領が再選足固め

 次期大統領選を来年3月に控えたロシアで、プーチン大統領は9月1日、高校生らを集めた「オープンクラス」を開催した。全土にテレビ中継されたオープンクラスでプーチン大統領は若者たちにロシアの偉大さを語る一方、住民からの陳情や要望が入った書類挟みを知事に手渡し、“優しい皇帝”を演出した。
(モスクワ支局)

知事に「陳情書」手渡し
柔和なイメージ演出

 来年3月に予定される大統領選まで半年余りとなった。プーチン大統領は大統領選への出馬を明言していない。一方で7月には、自らの後継者を任命する可能性に言及したが、その後、後継者について語ることはない。プーチン大統領の出馬は既定路線である。

プーチン氏

6月24日、ウクライナ南部クリミア半島の保養施設で、子供たちに迎えられるロシアのプーチン大統領(AFP時事)

 ただ、ロシアの主な輸出品であるエネルギーの価格低迷や対露経済制裁を受け経済は低迷したままだ。2018年にかけ経済がさらに悪化するとの観点から、大統領選の前倒しについての観測が流れたこともあったが、政府高官はこれを明確に否定した。

 このような中でプーチン大統領は6月以降、児童や生徒ら若者を対象とした集会に精力的に出席している。その集大成とも言えるのが、ロシア全土で新学期が始まる9月1日に、ヤロスラヴリ州で行われた「オープンクラス」への出席だ。

 9月1日は「知識の日」であり、学校ごとや学年ごとに、何かしらのテーマに基づいた授業が行われる伝統がある。プーチン大統領がこの日、若者らに語った内容は、なぜロシアは強く、ロシアはどこへ行くのか―、ということであった。

 「ロシアは1000年以上前から存在し、時代により試されてきた。われわれが1000年以上存在し、活発に発展し自らを強化しているなら、それを可能にするものを持っていることだ。われわれを前進させる、内的な原子炉というべきものだ。(詩人の)グミリョフが語るように、わが国を前に進めようとするある種の情熱である。われわれの前に生きていた世代は、わが国を強く偉大な大国にするために大きな努力をしてきた」

 このように、なぜロシアが偉大なのかを語ったプーチン大統領は、生徒らとの質疑応答で、子供たちの夢や将来の職業について意見交換した。この中で、人工知能こそがロシアだけでなく人類全体の未来であり、人工知能分野でリーダーとなる者が、世界の支配者となる、との見通しを示した。

 これら若者らとの集会への出席が、大統領選に向けた選挙運動であるとの見方をクレムリンは否定しているが、若者らと共にあるエネルギッシュな大統領との印象を国民に発信していることは間違いない。その上で、オープンクラスで大統領は、集まった知事らに、緑色の書類挟みを手渡すパフォーマンスを行って見せた。

 この書類挟みには、今年6月15日に行われた「プーチン大統領と国民の直接対話」集会で、大統領に寄せられた陳情や苦情など、国民のさまざまな訴えの書面が入れられていた。

 かつてロシアでは、皇帝が取り巻きの貴族らに対し、領民らの暮らしについて、その貧しさや、彼らが何を欲しているかについて、より考えるよう促すという伝統があった。クレムリンは恐らく、この伝統を念頭に、今回の演出を行ったのだろう。

 プーチン大統領が知事らに、国民の訴えが入れられた書類挟みを手渡し、知事らがそれを恭しく受け取る。大統領は国民の生活に常に心を配っており、それぞれの地域の代表である知事に、さまざまな問題の解決を指示するという“儀式”を行って見せた形である。

 ロシアのテレビで流れる政治トークショーでは、2018年の次期大統領選ではなく、その次の大統領選が行われる2024年のロシアについて語られている。プーチン大統領の再選を疑うものはいない。