イラン情勢、湾岸安定へ外交力を示せ


 イランをめぐり、ペルシャ湾岸で緊張が高まっている。安定化への鍵を握るのは米国だが、イランとの関係が良好な日本の「橋渡し外交」への期待も高い。原油供給の大動脈ホルムズ海峡の安定への取り組みが急務だ。

サウジ空爆への関与疑い

 安倍晋三首相は米ニューヨークでイランのロウハニ大統領と会談。「地域の平和と安定に向けて建設的役割を果たしてほしい」と注文を付けた。サウジアラビア東部の石油関連施設が空爆を受け、イランの関与が疑われていることを受けた発言だ。

 この空爆で、サウジの原油産出の約半分に当たる日量570万バレルの生産が停止。一時、原油価格が急上昇し、市場に衝撃が走った。

 イエメンの親イラン反政府武装組織フーシ派が犯行声明を出したが、米国はイランの関与を主張。英仏独もこれに歩調を合わせ、イランへの非難を強めている。

 イランはフーシ派を支援しており、間接的なイランの関与は考えられるが、米国は関与の証拠を示しておらず、空爆をめぐって不透明感が漂っている。

 トランプ米大統領は昨年5月、一方的にイラン核合意からの離脱を宣言し、経済制裁を再開した。ミサイル開発の禁止が合意に含まれていないことへの不満がその理由の一つだ。その後、制裁の再開に反発するイラン、核合意の継続を求める英仏独、制裁継続で譲らない米国が対立し、ペルシャ湾岸でタンカーが攻撃を受けるなどして地域の不安定化が進んでいる。

 米国が、ホルムズ海峡の安全確保を目的に有志連合を発足させることを提唱したものの、同調する国は少ない。

 一方、イランは国連総会で「ホルムズ・ピース・エンデバー(ホルムズの平和への努力、HOPE)」構想を提唱した。ザリフ外相はこの構想について、地域のすべての国には「地域の平和、安定、繁栄を守る義務」があると指摘。「航行の自由とエネルギー輸送を維持する上で国際社会と共通の利害を持つ」とホルムズ海峡近海の安定へ湾岸諸国が協力するよう呼び掛けた。

 米国の有志連合構想、サウジ派兵に対抗するためとみられるものの、安定への前向きな意思表示であり、地域内の各国との緊張緩和につなげてほしい。イラクはすでにこの構想を歓迎することを明らかにしている。

 ロウハニ大統領は国連総会に際しての記者会見で、米国との対話の可能性に言及。「現在の合意が最大限とは思っていない」と核合意の修正にも応じる姿勢を初めて示した。

 いずれも経済制裁の解除が前提で、短期間での実現は期待できないものの、歩み寄りの姿勢として評価したい。

日本の取り組みが必要

 イランは、イエメンだけでなく、イラク、シリア、レバノンへの影響力も強めている。精鋭部隊、革命防衛隊を派してシーア派民兵組織を支援しており、イスラエル、アラブ諸国にとって脅威だ。

 地域の安定化への取り組みが必要であることは言うまでもない。イラン、米国双方と良好な関係を持つ日本が外交力を発揮すべきときだ。