シリア攻撃、国際規範への挑戦許すな


 首都ダマスカス近郊東グータで化学兵器を使用したシリアのアサド政権に対し、米英仏が軍事攻撃を行った。人道と国際規範への公然たる挑戦に断固とした姿勢を示したものだ。化学兵器使用が理由のシリアへの攻撃は昨年4月に続き2度目だが、今回は米国単独ではなく英仏が共同しての軍事行動であったことに意味がある。

米英仏が化学兵器施設を

 トランプ米大統領はホワイトハウスの演説で「独裁者アサドの化学兵器関連施設への精密攻撃を指示した」ことを明らかにし、「邪悪で卑劣な攻撃は、母親、父親、幼児、子供たちを苦しみでのたうち回らせた。人間の行うことではなく、化け物による犯罪だ」と厳しく非難。「攻撃の目的は、化学兵器の製造、拡散、使用に対する強い抑止力を確立する」ことだと語った。

 英国のメイ首相は「われわれは米国、フランスの同盟国と一緒に行動する」との声明を発表。フランスのマクロン大統領は「シリア政府が化学兵器で男女や子供を殺害した事実と責任に間違いはない。フランスが設定したレッドライン(越えてはならない一線)を越えた」と軍事行動の理由を説明した。

 今回の攻撃は、化学兵器の研究施設や保管庫など3カ所に対して行われた。その規模についてマティス米国防長官は「昨年と比べてほぼ2倍の兵器を使った」と述べている。

 トランプ大統領は演説で、アサド政権を支援するイランとロシアを名指しで非難。特にロシアに対して「プーチン露大統領が2013年に化学兵器の根絶を約束したが、それを守らなかった」とし、「ロシアは暗い道を転がり続けるのか、選択しなければならない」と強調した。

 これに対しプーチン大統領は「攻撃を断固非難する」と反発を強めている。米露の対立はさらに深まると予想されるが、一方で米国は、攻撃の姿勢を示してから実際に攻撃するまで一定の時間を取り、避難の余裕を与えることで一触即発の事態が生じることを避けてもいる。

 米軍のダンフォード統合参謀本部議長は「アサド政権の化学兵器能力を長期的に大きく後退させた」としているが、化学兵器使用に対する抑止効果を疑問視する向きもある。米英仏はアサド政権が今後、化学兵器を使うような兆候を見せた時、再度攻撃するなど厳しい監視と抑止を続けるべきである。

 米国のヘイリー国連大使は「国際規範を守るため」軍事行動が必要との見解を示した。化学兵器の使用が繰り返されたことを見過ごせば、国際規範がなし崩し的に有名無実のものになりかねない。今回の米英仏が取った行動は、それを防ぐための最低限のものである。

拡散許さぬ姿勢貫け

 今回の攻撃に対し安倍晋三首相は、米英仏の断固とした決意を支持する姿勢を表明した。当然である。6月初めまでに予定されている米朝首脳会談を控えたこの時期、「非核化の意思」を表明していると言われる北朝鮮に、軍事的選択肢が単なる脅しではないことを示すものになる。核や化学兵器の拡散を許さないという姿勢を米国および国際社会が貫く必要がある。