イラン、「シーア派の三日月地帯」完成か
イラク・シリアなどで影響力拡大
イランは、イラク国境からレバノン至る地域での影響力を確保し、中東での「シーア派の三日月地帯」をほぼ完成させた。これは、サウジアラビアを中心とするイスラム教スンニ派に対抗するためのイランの戦略的目標が達成されたことを示し、中東での米国のプレゼンスにとっても重大な障害となるとみられる。
米国防総省当局者らは、中東でのイランの影響力拡大には軍事力で対抗すると強調するが、軍幹部は直接的な衝突には消極的だ。
イラク、シリアでは、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦がほぼ終わり、米軍主導の有志連合は、軍事作戦の縮小を望んでいる。だが、イラン系民兵組織、イランの支援を受ける武装組織はイラン西部のイラク国境から、シリアの地中海岸に達する輸送路の確保に成功したという。
米平和研究所中東計画の責任者サーハン・ハマサイード氏は4日、イランは自国からレバノンに至る「通路を確保」したと、イランの悲願「シーア派の三日月地帯」が完成したとの見方を示した。
イランの精鋭部隊「革命防衛隊」は以前から、レバノン、イラク、シリアに武器、物資を巧妙な手法で輸送してきた。だが、三日月地帯ができたことは、イランが各地域でイランを代理する勢力を確保することに成功していることを示している。
イラクとシリアでは、革命防衛隊やイラン系組織が「人民動員軍(PMF)」という民兵組織を訓練、支援しており、PMFはISの後退を受けて、両国で影響力を拡大している。ハマサイード氏は「PMFは(イラクを通る陸の橋)の保証人」だと指摘した。
さらにイランはイラクのアバディ政権に対してPMFをイラク軍に編入するよう圧力をかけている。
シリアでは、大量のイラン人民兵が、アサド政権軍に参加しており、IS殲滅(せんめつ)を受けて徐々にシリア内での地歩を固めているという。
ワシントンのシンクタンク、戦争研究所の上級情報プランナーのジェニファー・カフェレラ氏は、三日月地帯の構築の大部分は、米国からの対応を「招かない程度」で、秘密裏に進められてきたと指摘、米軍がIS掃討に集中したことが、三日月地帯構築のための「時間と自由をイランに与えた」と指摘した。
(ワシントン・タイムズ特約)