米のシリア攻撃、「無法」へ断固たる力の行使
トランプ米政権が、シリアに対する軍事行動に踏み切った。シリアのアサド政権が空爆で化学兵器を使用したと断定、その対抗措置として行った。
電撃的な行動で「力による抑止」の断固たる意志を国際社会に示した。
アサド政権がサリン使用
シリア・イドリブ県の反体制派が支配する町への空爆では、子供を含む多数が死亡。猛毒の神経ガスであるサリンが使用された疑いがある。これに対し、トランプ大統領は「一線を越えた」と厳しい姿勢を示した。
トランプ氏は「シリアが禁じられた化学兵器を使用し、国連安全保障理事会の要求を無視したことに議論の余地はない」と非難。「致死性の化学兵器の拡散と使用を防ぎ、抑止することは、米国の死活的な国家安全保障上の利益にかなう」と訴えた。
米国はシリア内戦で、これまで過激派組織「イスラム国」(IS)などへの空爆は行ってきたが、ロシアという後ろ盾を持つアサド政権への攻撃は避けてきた。一方、ロシアの軍事介入以降、アサド政権は軍事的優位に立っている。
今回の攻撃は、オバマ前米政権が国際協調主義を掲げ、軍事力行使を極力避けてきたことに付け入り、力による現状変更を行い、国際秩序やルールを破ってきた国や勢力に対し、力の行使も辞さないことを示した。米外交政策の大きな転換であり、その影響は大きい。
安倍晋三首相は「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとの米国政府の決意を日本政府は支持する」と表明。さらに「国際秩序の維持、同盟国と世界の平和と安全に対するトランプ大統領の強いコミットメントを日本は高く評価する」と述べた。英独仏など欧州主要国も、米国の行動を支持している。
今回の攻撃では巡航ミサイル59発を発射したが、標的となったのは化学兵器が保管されている空軍飛行場だけで、極めて限定的なものだ。今後、米政権がどこまで軍事的にコミットするかははっきりしない。ただ「ある国が一線を越えた場合、トランプ大統領は行動をいとわぬことを示した」(ティラーソン国務長官)ことの意味は実に重い。
また、シリアでの化学兵器使用をめぐって国連での議論が進行中の段階で、国連の「お墨付き」を待たずに攻撃に踏み切ったこと、習近平国家主席を迎えての初の米中首脳会談中に行われたことも意味深長だ。
米中首脳会談を前に、トランプ氏は「もし中国が北朝鮮問題を解決しようとしなければ、われわれが行う」と英紙とのインタビューで語り、安倍首相との電話会談では、北朝鮮政策の見直しについて「全ての選択肢がテーブルの上にある」と述べた。それらが言葉による駆け引きに終わらないことを今回の攻撃は示したと言える。
秩序乱す行為への警告だ
「米国第一」を掲げ、内向き志向と見られたトランプ政権が、安保問題、国際紛争に対し、現実にどのような行動に出るかが注目されていたが、国際秩序を乱し、米国の国益を脅かす「無法」な行為に対しては、断固とした力の行使を行うという強い警告となった。