トルコ情勢、役割の重要性踏まえた対応を
クーデター未遂が発生したトルコは、北大西洋条約機構(NATO)加盟国であり、NATOにとって戦略的な重要性は大きい。さらに、最近は難民問題や、過激派組織「イスラム国」(IS)対策でも重要な役回りに位置付けられる。
ロシアとの関係を改善
トルコと欧州連合(EU)は3月、欧州に流入する難民の抑制に向けた対策で合意。4月にはギリシャに密航した難民・移民のトルコへの強制送還が始まり、一定の成果を挙げている。IS対策に関しては、トルコ南部のインジルリク空軍基地が米軍主導の空爆作戦の出撃拠点となっている。
こうした中、先月末にトルコのイスタンブール国際空港で大規模なテロ事件が起きた直後、ロシアのプーチン、トルコのエルドアン両大統領は、トルコによる昨年11月のシリア駐留ロシア軍機撃墜後初めて電話会談した。双方は関係修復を確認し、テロとの戦いで協力することで一致したという。プーチン大統領はテロ事件に触れ、哀悼の意を表明した。
ロシア大統領府の発表では、ロシアは対トルコ制裁措置を解除する意向で、今後、政府間で協議する。今月9日には、ロシア人観光客を乗せたロシアのチャーター機第1便が、8カ月ぶりにトルコの観光地アンタルヤに到着した。両国の関係改善で、この地域の不安定要因の一つが解消されることが期待される。
また、ロシアのラブロフ外相とトルコのチャブシオール外相は1日、ロシア南部のソチで会談し、シリア問題やテロとの戦いで協力していくことで一致したと伝えられる。ラブロフ外相は会談後、シリアでの軍事行動に関し、両国軍が今後接触していく見通しを示し、シリアのテロ組織にトルコ領土を利用させないことが重要だと指摘した。
一方、チャブシオール外相はシリア問題の解決に向け両国の協力が不可欠だと強調するとともに、両国大統領は9月に中国で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合で顔を合わせる前に、8月にソチで直接会談する可能性を検討していると述べた。
もっとも、シリア内戦でロシアはアサド政権を、トルコは反体制派を支援している。和平協議をめぐっても両国の間には対立がある。
ロシアはクーデター未遂後のトルコ情勢が速やかに安定するかを注視している。不安定な情勢は両国の関係改善の流れに水を差しかねないからだ。今回の事態を受け、プーチン政権は「権威主義的で政治決定に異論もあるが、エルドアン政権は合法的だ」(プシコフ下院外交委員長)と支持を表明した。
ロシアにとっては欧米の制裁が続く中、トルコとの経済交流が持つ意味は大きい。トルコとの関係改善には、ロシア産天然ガスをトルコ経由で欧州に供給する「トルコ・ストリーム」計画の凍結解除などのメリットがある。
エルドアン政権は自制を
一方、エルドアン政権はクーデター未遂後に強権的な姿勢を強めつつある。
自国の置かれた立場の重要性を踏まえ、自制しなければならない。