イランは疑惑払拭へ具体的な措置取れ


 イラン核問題をめぐる国連安保理常任理事国にドイツを加えた6カ国と、イランとの協議がジュネーブで開かれた。共同声明は「実質的で前向き」な協議が行われたと関係改善を強調するが、イランの核武装阻止へ具体的な成果は見えてこない。

 放棄の意思は見えず

 今協議はイラン保守穏健派のロウハニ大統領就任後初めてであり、進展に期待が高まっていた。イランは、新提案を6カ国に提示したもようだ。内容は明らかになっていないものの、ウラン濃縮の縮小を提示したとみられ、国際原子力機関(IAEA)による核施設への抜き打ち査察を受け入れるとの内容も含まれているとの報道もある。

 欧州連合(EU)のアシュトン外交安全保障上級代表(外相)は「最も踏み込んだ協議」とイランの対応を評価。来月上旬にもジュネーブで再度協議が行われる。

 関係改善を強調する両者だが、イランの核武装阻止という点での進展はみられない。ロウハニ大統領は先月の訪米で、穏健派としてのイメージを世界にアピール。イランは変わったというメッセージを発した。

 現在のイランにとっては、経済制裁の解除が再優先だ。だが、核放棄の意思はまったく見えてこない。イランの最高指導者ハメネイ師も放棄を口にしていない。アラグチ外務次官は、今協議に先立ち「濃縮ウランの国外搬出は越えてはならない一線」としている。

 西側諸国の最大の目的は、イランの核武装の芽を完全に摘むことだが、どの時点でイランに核武装の意思なしと判断するかは難しいところだ。だが、発電に必要な濃度よりもはるかに高い20%もの濃縮ウランを国内に残したままでの制裁緩和は回避すべきだろう。

 イランとしては、直ちに核兵器を保有する意思はないとしても、濃縮ウランを維持することで、米国、イスラエル、湾岸のアラブ諸国に対し、一定の「核抑止力」を温存したいという狙いはあるはずだ。

 核開発の縮小、制裁解除をめぐっては、それぞれの国内の事情も存在する。イランの革命防衛隊などを中心とする保守派は、先月のオバマ米大統領とロウハニ大統領の電話会談を強く非難している。

 核協議でイランが譲歩することがあれば反発は必至だ。イランは今後、国内の保守強硬派の態度を見極めながら協議に臨むことになろう。

 また、米国の対イラン制裁緩和には議会の承認が必要だ。すでに対イラン強硬派議員らからは、緩和を懸念する声が出ている。米国の同盟国イスラエルも警戒を強めている。イスラエルのネタニヤフ首相は、核廃棄への目に見える形での措置が取られなければ、制裁は緩和すべきでないとくぎを刺した。

制裁緩和を急ぐ必要なし

 イランは主要産油国でもあり、穏健化、対外関係の改善は歓迎すべきことだ。

 だが、核開発疑惑をめぐっては、具体的な措置が取られることが第一歩であり、制裁緩和を急ぐ必要はない。イランには国際社会に向かって疑惑を晴らす義務がある。

(10月19日付社説)