離島の防災対策を再考せよ
東京・伊豆大島の川沿いで発生した土石流が集落を襲い、住民計22人の死亡が確認された。警視庁や東京消防庁、陸上自衛隊は計1100人で捜索に当たったが、被害に遭った住宅には大量の土砂が流れ込み捜索は難航。いまだに30人近くと連絡がつかず安否が気遣われる。今回の災害の原因を徹底的に調査し、被害防止に力を尽くさなければならない。
地盤が弱い火山灰土
台風26号の影響で、気象庁によると伊豆大島では1時間当たり122・5ミリの猛烈な雨を観測、16日朝までの1日の雨量は800ミリ以上に達し、いずれも観測史上最多となった。大規模な土石流が大きな被害をもたらした。
伊豆大島は周期的に噴火を繰り返してきた三原山(標高758メートル)を中心に形成され、噴出した多量の火山性の小石や火山灰が何層も積まれている。小石の層の下に、水が染み込みにくい溶岩や火山灰の層があるが、今回はその中間に大量の雨水が入り込み、表層の土砂が一気に流された可能性が高い。
被害が広がったのは、想定外の雨量のほか、離島ゆえに豪雨を記録した範囲が狭く、基準が満たされずに特別警報が発表されなかったこと、またタイミングの判断がつかなかったため、避難勧告が出されなかったことなどが挙げられる。
伊豆大島は、これまでも地震や台風の被害が多かった。特に水源に近い地域は、前に安全だったから今回も安全だというような考え方は通用しない。きめ細かい地域の被害想定図(ハザードマップ)を作成し、日ごろから避難訓練を徹底するとともに、危急の時は山間部の降雨状況を正確に素早く把握し、避難勧告を行う体制をさらに強化すべきだ。
ただし同島では19の川に土石流を止める砂防ダムや、土砂をためる遊砂地などを建設中だ。そのうち、元町近くの遊砂地が今回の土石流を部分的に防いだ可能性がある。効果的な建設を続けてほしい。
さらに、火山灰土などの不安定な地盤を強固にするという、もっと根本的な対策を取る必要がある。それには、植林によって森林を形成すべきだ。土砂流出の防止と洪水の緩和は森林の極めて重要な機能である。離島という特殊な地形、条件下での防災対策の再考が急がれる。
一方、国土交通省によると、土砂災害が発生する恐れのある危険箇所は、日本全国で約52万カ所。過去10年間の土砂災害発生件数は年平均でおよそ1000件もある。平成24年は837件で、ほとんどの都道府県で起きている。
国や自治体では、地形や地質に応じて、砂防堰堤などの施設や警戒避難体制の整備を実施しているが、ここでも植林による防災対策を考えるべきだ。
異常気象対策も必要
また、近年の大雨は地球温暖化が原因だと言われ、台風が大型化するとの予測もある。大都市圏ではヒートアイランド現象の影響もあって、局地豪雨が頻発する傾向にあり、都市河川の洪水や地下街への浸水が懸念される。本格的な地球温暖化対策も必要だ。
(10月18日付社説)