ガザ侵攻、これ以上の流血を阻止せよ
パレスチナ自治区のガザを実効支配するイスラム根本主義組織ハマスとイスラエルとの戦闘が激化し、イスラエル軍のガザへの侵攻にまで発展した。戦闘開始からのイスラエル側の死者は市民3人を含む51人だが、ガザの死者数は1088人、負傷者は6470人だという。
主導権を握る強硬派
イスラム教のラマダン(断食月)明けの「イード・アル・フィトル」と呼ばれる3日間の祝日が始まったのを受け、イスラエル軍は取りあえず「無期限」で攻撃を停止する考えだ。
だが、イスラエルのネタニヤフ首相は、軍事作戦を続ける期間を、ハマスがガザからイスラエルへの侵入用に彫った数㌔に及ぶ地下トンネル網を完全に破壊するまでと説明した。トンネルはハマス活動家の移動経路となり、イスラエル側に侵入して大規模テロを起こし、イスラエル兵の誘拐やロケット弾発射機材の隠し場所としても利用されていた。
ネタニヤフ首相は「ガザの非武装化が必要だ」としており、攻撃が長期化するものと予想される。一般市民の流血拡大が危惧され、一刻も早い国際機関による停戦仲介が望まれる。
ガザでの戦闘の特色の一つは、イスラエル軍とハマスとの歴然とした戦力の相違だ。イスラエル側は空爆を含めた攻撃力の優位を誇っているのに対し、ハマスはロケット弾攻撃で対抗しているにすぎない。
双方の攻撃の応酬で傷付くのは一般市民だ。イスラエル軍は空爆の前に退避勧告を出していたにもかかわらず、ハマスが市民を「人間の盾」として利用し、多くの犠牲者が出たケースもある。これ以上の流血阻止が急がれる。
問題は停戦の仲介役となる国がないことだ。今回、エジプトのシシ政権が提示した停戦案の内容は無条件の戦闘停止を求めるもので、ハマスには不利だ。一方、ケリー米国務長官が示した停戦案は、ハマスの要求は詳細に盛り込んでいるが、ガザでのトンネル破壊作業継続に触れていないため、イスラエルは拒否した。
事態の解決を困難にしているのは、イスラエルとハマスの内部事情だ。ネタニヤフ政権にしろハマスにしろ、内部の強硬派が主導権を握っている。
まず望みたいのは、即時無条件の「人道停戦」を受け入れるよう訴える議長声明を発表した国連安全保障理事会の意向に沿って行動することである。イスラエル、ハマスとも憎悪による攻撃の応酬からは建設的なものは何も生まれないことを認識すべきである。
流血拡大で喜ぶのは、国際テロ組織アルカイダ系の勢力である。双方は、そこに共通の利害が存在することを忘れてはならない。
関係国は沈静化に努めよ
ガザでの戦闘の拡大防止には、関係国の事態沈静化への努力が不可欠だ。
イスラエル側の戦闘拡大防止に関しては米国が説得に当たるべきだし、ハマスについては影響力を持つペルシャ湾岸の国家カタールやトルコが力を尽くす必要がある。流血阻止に国際連携が望まれる。
(7月30日付社説)