パレスチナ衝突、停戦への努力を加速せよ
イスラエルとイスラム根本主義組織ハマスが再び衝突、情勢は悪化の一途をたどっている。宿敵である双方に譲り合う可能性はなく、周辺国、国際社会による仲介が急務だ。
エジプトによる仲介困難
衝突でイスラエル側に死者は出ていないものの、ガザ地区のパレスチナ人の死者はハマスとは無関係の一般人も含め100人を超えた。イスラエル軍によると、ハマスが5日間でイスラエルに向けて発射したロケット弾は500発を超え、イスラエルからの空爆は1000カ所以上に上る。
ハマスは、射程の長いロケット弾を使用して、エルサレム近郊や、イスラエル南部のディモナ核施設をも標的とするなど徹底抗戦の構えだ。11日には南部アシュドッドで給油所をロケット弾が直撃し、イスラエル人3人が重軽傷を負った。
イスラエルは地上軍の投入を示唆するとともに、予備役4万人の招集を決めるなど、ハマスへの圧力を強めている。ネタニヤフ首相は「あらゆる可能性を検討し、あらゆる可能性に備えている」と述べた。
だが、イスラエルとしても、侵攻は控えたいのが本音だ。ハマスの拠点を破壊できても、一時的に過ぎない上に、パレスチナ人に多数の死者を出すことは避けられず、国際社会の非難を浴びることになる。
2008年から09年に行ったガザ侵攻では1000人以上のパレスチナ人が死亡し、戦争犯罪を問われた。イスラエル兵に犠牲者が出れば、国内からの批判にもさらされることになる。
一方で強硬姿勢に出ざるを得ない国内の事情もある。リクードを中心とする右派政権には、国民から対パレスチナ強硬路線を取ることへの期待が寄せられている。また、政権内には対パレスチナ強硬派の右派「わが家イスラエル」を擁している。大規模空爆を主張する党首のリーベルマン外相は、政府内の意見の不一致でリクードとの統一会派からの離脱を発表した。
停戦には双方の顔を立てる形での仲介が必要だ。適役は隣国で、イスラエルとも和平条約を締結しているエジプトだが、動きは鈍い。イスラエルとハマスは12年11月の交戦後、エジプトのムスリム同胞団系のモルシ政権の仲介で停戦を成立させた。ハマスの母体は同胞団であり、一定の影響力を行使できたためだが、エジプトの現政権は、モルシ大統領を失脚させ、同胞団をテロ組織として敵視していることから仲介は困難だ。
オバマ米大統領はネタニヤフ首相と電話会談し、停戦へ仲介の用意のあることを伝えた。一方、ハマスによる攻撃を非難し、イスラエルの自衛権への支持を表明しており、ハマスが受け入れるかどうかは微妙だろう。
パレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハとハマスは先月、統一政府を樹立したばかりだ。最高権力者はファタハのアッバス・パレスチナ自治政府議長だが、ガザ地区を実効支配するハマスへ影響力は及ばない。
これ以上の流血阻止せよ
アラブではないが、イスラム国のトルコの仲介もあり得よう。流血の阻止へ、国際社会の強力な仲介努力が必要だ。
(7月13日付社説)