「米中日」構図における韓国の活路


韓国紙セゲイルボ

新しい思考で突破すべきだ

 米国と中国、中国と日本の競争の構図が深まり、東アジア地域の秩序は不安定な姿を見せている。中国が米中覇権競争で代弁される世界秩序下の現状維持勢力として、そして中日覇権競争によって代表される東アジア地域の秩序における現状打破勢力として行動し、今日の国際秩序は転換期を迎えている。

周恩来中国首相(左)とキッシンジャー米国務長官

北京の人民大会堂で会食する周恩来中国首相(左)とキッシンジャー米国務長官=1973年11月10日(UPI)

 米国の役割はいつになく重要なのに、トランプ米大統領は来年の再選に不利になる国際的な懸案から手を引くような態度を見せている。同盟のクルド族を裏切ってまで、突然、米軍のシリア撤収を決定し、米中通商紛争の拡大は再選に不利だとの判断から、中国の特別な譲歩もないのに通商交渉を暫定的に終結させた。また、香港の民主化デモに対しても、消極的な立場をあらわにして香港のデモ隊を失望させた。世界秩序の第1の指導国としての、そして東アジアにおける平衡錘としての米国の役割は揺らいでいる。

 こうした中、北朝鮮との関係改善で突破口を見いだそうとしていた韓国の意図は北朝鮮の硬直した態度によって行き詰まり、むしろ金正恩政権は韓国を排除し、米国との一括交渉の妥結によって問題を解決しようという本音を現しつつある。

 一言でいって、韓日、韓中、韓米関係はもちろん、南北関係まで、スッキリしたものは一つもない。今こそ外交的な暗く長いトンネルを抜け出さなければならない。暗闇の中で道を探しだす最善の方法は明るかった時の記憶だ。その最初のボタンは韓日関係の改善であり、その次は韓米日三角協力の復元だ。さらに韓中関係の新しい定立が要求される。これを前提として南北関係改善を図らなければならない。南北関係がいまだに半島周辺の強大国関係の従属変数だという不都合な真実を受け入れなければならない。

 外交的な膠着(こうちゃく)状態から抜け出す最善の方法は「新しい思考」を出発点にすることだ。1972年2月、毛沢東主席とニクソン大統領による米中接近はニクソン氏とキッシンジャー国務長官の新しい思考があったので可能だった。彼らの新しい思考がデタント時代を開いたのだ。

 また1989年、地中海マルタ海域のブッシュ米大統領とゴルバチョフ・ソ連書記長の船上会談は冷戦体制を終結させ、脱冷戦の新秩序を樹立した。これはゴルバチョフ氏とシェワルナゼ外相の新しい思考があったので可能だったのだ。

 いまこそ韓国には新しい思考が必要だ。その始まりは過去2年間余りの外交的な失敗を十分に噛(か)み締めつつ、解放後、今日に至るまでの連続線上で、韓国の外交を直視しながら、われわれの「外交ドクトリン」を樹立しなければならないのだ。

(李相桓(イサンファン)韓国外大教授、10月18日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

「原点」にもどれ

 一番言いたいことを最後にさらっと書く。韓国言論の読み方原則がここでも表れている。「解放後、今日に至るまでの連続線上で」とは、日韓関係において1965年の日韓基本条約・請求権協定を遵守(じゅんしゅ)する、ということを指している。

 文在寅政権の失敗外交を立て直すには、従来の政府が取ってきた外交路線にいったん戻ろうという主張だ。その一歩は日韓関係の改善であり、次に日米韓「三角協力」の復元だと言っている。さらに文政権は対北外交にオールインしているが、南北関係は強大国外交の“従属変数”にすぎないという現実を受け入れよとも迫る。

 ようやく正論が出てくるようになった。これまでは外交的行き詰まりや、経済への悪影響などを小手先で調整して、難題を解決しようとしていた感があったが、根本的に韓国が置かれた窮地を脱するには「原点」に戻るべしと促しているわけだ。

 そのためには文政権には「新思考」が必要であり、これまでの考えを捨てろと提案する。だが、李相桓教授は文政権の性格をどうみているのだろうか。文政権が「親北」「従北」路線を簡単に諦めることができると思っているのか。

 例えて言えば、文政権は中朝という“浮気”相手を断ち、日米という“本妻”の下に戻れと李教授は迫るが、文政権にとっては逆で、これまでが“偽りの関係”で、南北そして中国との関係こそが本来の関係だと信じ込んでいるわけで、そんな彼らに「新思考」ができるとは思えない。

 文政権が「従北」思考を抱えながら、日米との協力関係を基本に据えることこそ“偽り”だ。文政権の思想的解剖がまだ足りない。

(岩崎 哲)