欧米日に蚕食される韓国スポーツ用品市場


韓国紙セゲイルボ

国産ブランドの活路を開け

 日本政府が2日、韓国をホワイト国リスト(戦略物資輸出優待国)から除外することを決定した。大統領府と政府、そして与党の共に民主党は日本政府の経済報復に対抗して「2度と負けない」等、強いメッセージを連日発信しているが、実際の解決策となると、簡単には見いだせていない。

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6日、韓国ソウル市中区に掲げられた日本製品不買運動を呼び掛ける旗(AFP時事)

 国際的な分業体制において各国企業の長所が一つにまとまれば互いに“ウィン・ウィン”になるが、特定分野においてあまりにも依存すると被害が少なくないという事実を今こそ政府も、国民も悟ったはずだ。

 当面、半導体分野の対策が至急だが、今回の事態は他の産業も含めて全般的に点検する契機としなければならない。特に韓国はスポーツ用品市場で海外依存度が高い。国際競技の現場取材に行って、国家代表の選手たちが海外ブランドを身に付けて走る姿を見る時は、「なぜわれわれは世界的なスポーツブランド一つないのだろうか」と残念な気持ちが大きかった。

 サッカーとバスケット代表チームはナイキ(米)、野球とバレーボールはデサントとアシックス(いずれも日本)のユニホームを着ている。バドミントンと卓球の代表チームも各々ヨネックスとヴィクタス(日)製品を使う。“国技”であるテコンドーでさえアディダス(独)の道着だ。オリンピックとアジア大会などで韓国選手団の公式スーツは大韓体育会のパートナー社ヨンウォンアウトドアのグローバルブランドであるノースフェイス(米)だ。商標権をとって国内企業が作ったようだが、数百億ウォンの商標権料を米国の本社に払っている。

 大部分が欧米と日本のブランドに蚕食されているといっても過言ではない。かろうじてアーチェリー代表が韓国企業のコーロン、カーリング代表がフィラ(イタリア発祥だが、現在は韓国企業が買収)のウェアを着て、体面を保った。

 中国は自国ブランドを戦略的に育てており、2022年北京冬季五輪も活用している。韓国は平昌冬季五輪という好機を逃した。自国ブランドを育て、全世界に知らせることができる機会を逸してしまった。冬・夏季五輪とサッカーのワールドカップ、世界陸上選手権に続き最近閉幕した世界水泳選手権まで世界最大のスポーツイベントを全部開催した国と自負するものの、国家を代表するスポーツブランド一つないのが大韓民国の現実だ。

 単純にこれは代表チームだけの問題ではない。代表チームが使う用具・用品は大部分、生活体育に拡散するので、国産品の立地はますます狭まることになる。競技力と連結した問題なので、日本などの海外ブランドを使う種目団体を無条件批判することもできない。日本製品の不買運動が起きているが、数年間使うと契約した状態なので、一方的に破棄することはできないからだ。

 スポーツ産業は朴槿恵政権の時に集中育成した分野なので、文在寅政権では多少疎外される傾向があった。今回を契機にして、関心が低かった国産スポーツブランドの活路が開かれることを期待する。

(崔ヒョンチャン政治部記者、8月6日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

国家ブランド高めるのが先

 いわゆる「ホワイト国」リスト除外で韓国では政府も民間も激しい日本批判を繰り返している。紙面には同じような記事が並び、どれをとっても同じ味の皿ばかりの印象だ。そこで、違ったテイストの記事をピックアップした。

 今回、韓国はあらゆる産業分野でいかに日本に依存していたかを思い知った。ビールや衣料品はもとより、デモを伝えるカメラやビデオまでが日本製で、記者はロゴをテープで隠して撮影する始末だ。始球式に臨んだ大統領が日本製のスニーカーを履いていただけで批判される国で、デモ参加者のおそらく半数が履いているのがデサントなど日本製、という皮肉な想像も浮かんでくる。

 土台、市場が小さく、開発費に資金を回す余裕がない韓国で、量販品の自国ブランドを立ち上げるのは容易ではないばかりか、正しい経営方針でもない。学問偏重の伝統からして、体を動かすことに価値を置いてこなかった国で、スポーツブランドが育つ素地はあまりない。学校体育、成人体育という広い裾野があり、国民体育大会が開かれ、各種クラブスポーツが盛んな日本だからこそ、スポーツブランドが育ったという事情の違いも素直に認めたらいいと思う。

 むしろやるべきことはスポーツブランドではなく、国家ブランドを高める方が先ではないか。そのためには約束を守り、人を罵らず、激情に流されず、品を保つことが大切だと思うのだが…。

(岩崎 哲)