韓日関係の現実的な出口戦略探せ


日本の報復措置は不信が背景に

 日本が韓国をホワイト国から除外すれば韓日の対立は出口を見つけるのが難しい泥沼に陥る。期待をかけたボルトン米大統領補佐官(国家安保担当)訪韓でも韓日仲裁は進展しなかった。

ポンペオ米国務長官(左)と河野太郎外相(中央)、韓国の康京和外相

ポンペオ米国務長官(左)と河野太郎外相(中央)、韓国の康京和外相=2018年7月、東京(EPA時事)

 韓日が世界貿易機関(WTO)など国際社会で戦う中で、対立は民間にまで飛び火している。韓国では日本不買運動が広がり、日本でも「韓国は友好国でない」という言葉が出るほどだ。離婚間近の夫婦のような言い争いの真っ最中だ。

 今回の韓日対立は直接的には日本の輸出規制措置から始まった。当初、日本政府は韓国が最も痛く感じる部分を選択したと言った。だが最近、日本政府は輸出規制で通関手続きは難しくなったが、韓国経済には特別な悪影響がないと言う。その例としてホワイト国でない中国を例に挙げた。輸出規制制度が日中貿易に何の影響も与えていないということだ。韓国がホワイト国に指定していない欧州国家との貿易も特別な問題がないではないかと抗弁する。

 だが、韓国では次第に危機意識が充満していている。対外経済政策研究院は日本の半導体素材輸出制限に伴う韓国の半導体生産が経済成長に及ぼす影響を推定した結果、半導体生産が10%減れば、国内総生産(GDP)が0・2~0・4%減少すると発表した。グローバル投資銀行のゴールドマンサックスも同じような分析を出している。

 問題は日本の輸出規制が長期間維持される場合、韓国の輸出減少が自動車、化学製品などの領域へ拡大する可能性が高まるという点だ。ホワイト国リストから削除されれば韓国経済に悪影響を及ぼすことは明白だ。

 韓国が日本の不当な措置を国際社会に訴えるだけでは、経済状況の悪化は防げない。反日フレームで国民を動員しても状況が好転するわけではない。今の状況ではこれ以上韓日関係を悪化させないことが現実的な処方策である。

 今のように相手方にだけ解決法を要求しては出口は見いだせない。状況がさらに悪化すれば両国があまりにも多くの傷を負い、その後では国民の説得はさらに難しくなる。今からでも戦略的な妥協の空間を作るための外交的な努力が必要だ。これは文在寅大統領が決断する意思を持てば可能だ。

 今からでも韓国は特使を送って、これ以上悪化をさせないための紳士協定を日本と作らなければならない。そのためにはまず、両国政府は国民を刺激する行動と発言を自制しなければならない。

 韓国は1965年の日韓基本条約を遵守(じゅんしゅ)することを明確にして日本の疑いを解かなければならない。日本の報復措置の根拠には韓国が基本条約を覆すのではという不信があるためだ。

 また日本はやはり韓国が重要な友好国ということを見せる必要がある。韓国と日本が重要な友好国という認識を明確にする時、韓日関係は管理できるためだ。

 これを土台に韓国は現金化措置を延期して、日本もホワイト国の削除を施行してはならない。このように両国が現象悪化を凍結する時、はじめて韓日関係の再構築は始まるだろう。

(陳昌洙(チンチャンス)世宗研究所首席研究委員、7月26日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

日韓基本条約に立ち返れ

 「今回の韓日対立は直接的には日本の輸出規制措置から始まった」と陳氏は言うが、それは違う。日本がなぜ管理強化したか、韓国は都合よく忘れている。日本はフッ化水素などが韓国で適正に使われているかを問うている。文在寅政権になってから、ホワイト国を維持する協議に応じてこなかったのは韓国の方だ。

 問題を解決しようとするなら、まず戦略物資が正しく管理されていることを説明するべきだ。それができないなら“横流し”を疑われても仕方がない。フッ化水素はウラン濃縮に使われる戦略物資。もし日本が韓国の違約を放置すれば、日本がテロ国家による核兵器開発に協力したことになる。だからの管理強化だと説明した。ホワイト国から除外されるのは当然である。悪事がばれるのを防ぐために論点をずらして、逆に「相手が悪い」と切り返す韓国流のケンカは通用しない。

 今日の対立を整理しようとするなら、「韓国は1965年の日韓基本条約を遵守(じゅんしゅ)するということを明確にする」よう陳氏は韓国政府に求めている。正論である。これが今日の日韓関係の基本であることを韓国人には自覚してもらいたい。歴史を遡(さかのぼ)って、世界の誰も承認しなかった1919年の「臨時政府」がスタートだと解釈を変えるのは歴史学会だけにしてもらいたい。国際関係には適用されない。

(岩崎 哲)