南北対話は平和をもたらすか
最悪の事態想定は指導者の責任
2年ぶりの南北対話が韓半島に平和をもたらすと信じるのは初心(うぶ)な考えだ。北朝鮮は文在寅政権スタート後だけでも11回のミサイル挑発と6回目の核実験を行った。今回の対話でも、「核問題を持ち出せば会談は水泡に帰す」と脅したという。
米ホワイトハウスの気流もなかなか尋常ではない。最近、韓国軍要人に明らかにした米安保担当者の発言は韓米関係の現状を雄弁に物語っている。「米国が見る日本と韓国の比重は以前は6対4だったが今は9対1だ」
彼は米国が北朝鮮を先制攻撃するためには「韓米同盟負担」と「国際社会の容認」という二つの条件が解消されなければならないといった。前者はすでに充たされ、後者は充足過程にあるというのが彼の説明だった。
「最悪の場合、韓米同盟が壊れてもそれほど関係ない。韓国が抜ければ日本と台湾で太平洋防御線をつくる代案があるからだ」
これまで米国が対北朝鮮軍事カードを出さないのは友好国の韓国の被害を意識した措置であった。今は自国の安全が脅かされている。韓国の被害より自国民の生命が、より重要な課題として浮上したという話だ。
こうした安保危機状況で、もしもの事態に備えることは国家の当然の責務だが、金富謙(キムブキョム)行政安全部長官は国会で、「北朝鮮攻撃対応訓練は危険を助長する誤解と不安感を与える」と述べた。
彼の情けない安保意識は李朝時代の官僚金誠一(キムソンイル)に似ている。通信使として日本を偵察して来た金誠一は豊臣秀吉の侵略を予告した黄允吉(ファンユンギル)とは違って、「秀吉は軍を起こすそぶりがない」と王に報告した。民心動揺を憂慮して偽りの報告をしたという。結局2年後、壬辰倭乱(文禄の役)が起こり国は廃虚になった。
ふくろうは空が晴れているのに、桑の根を拾って巣穴を塞(ふさ)いでおくという。ここで出てきた言葉が「桑土綢繆(そうどちゅうびゅう)」だ。備えあれば憂いなしの姿勢でいつも徹底的に準備してこそ、後顧の憂いを減じることができる。
指導者は皆が寝ている時、一人で目を開いていなければならない。皆が平和を語る時、最悪の事態を考える人こそ賢明な指導者ではないだろうか。歴史は繰り返す。少なくとも歴史を忘れた民族には…。
(裵然國(ペヨングク)論説室長、1月12日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。