丁元統一相の均衡失った北核観
武力統一に触れず体制防御強調
「北朝鮮の核・生化学兵器は韓国を攻撃するためのものでなく、体制防御または強大国を相手にした交渉カード用だ」(2002年2月2日、KBS深夜討論)
丁世鉉(チョンセヒョン)元統一部長官が在任中に行った北核関連の発言だ。丁元長官は金大中(キムデジュン)・盧武鉉(ノムヒョン)政府で統一部長官を務めた独特の履歴の持ち主だ。当時も今も進歩陣営の代表的な北朝鮮問題専門家である。
だがファクトチェックをしてみると、首をかしげざるを得ないことが多いというのが専門家たちの指摘だ。何より丁元長官の診断とは違い、北朝鮮の核兵器は交渉カード用というよりは武力統一用だということが明らかになっている。
核保有国プロジェクトの終着点に向かって走っている北朝鮮はますます隠してきた意図を露(あら)わにしている。労働新聞(2015年5月5日付)社説は、「われわれの核抑制力は祖国統一の歴史的偉業を繰り上げる万能の宝剣」とし、「食べるための駆け引き物ではない」とくぎを刺している。
金正日(キムジョンイル)の核兵器実戦配備の夢は結局、息子金正恩(キムジョンウン)に引き継がれ、実現一歩手前に来ている。金正日が生きていれば、「立派な私の息子」として肩を叩(たた)いたのではないだろうか。
丁元長官の診断および展望の失敗は均衡感が疑われる米朝認識のせいだという分析がある。米国より北朝鮮の肩を持つ態度が客観的な診断を難しくしたということだ。「米国が北朝鮮核開発の原因を提供した当事国」という発言も同じ脈絡で、国民の一般的な認識とも距離がある。
しかし、丁元長官は全く意に介さない。最近、文在寅(ムンジェイン)政府の対北朝鮮政策を批判した。「制裁と対話併行は政策でない」とし、「文大統領が完全に安倍(日本首相)のようになりつつある」とも述べた。彼は大統領選挙で文氏の諮問グループ委員長を務めた大統領選の功労者だ。信じた人から刺されれば、一層痛いものだ。
北核の第1ターゲットはまさに大韓民国だ。国連会員国は韓国を支援する隣人だ。なのに、他人事のように制裁の素振りだけせよという話なのか。
丁元長官の対北朝鮮問題解決法は南北和解時代には効用性が大きかったが、国際社会が一つになって、北核廃棄を圧迫する状況では通用しない。丁元長官は対北朝鮮問題発言に慎重を期する必要がある。
均衡を失った米朝観は北核解決をさらに絡まらせるという事実を肝に銘じなければならない。
(金煥起(キムファンギ)副編集局長、10月2日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。