現代の魔女狩りと「ディアスポラ」
合理的に未来を切り開けるか
最近、韓国社会で頻繁にメディアに登場する言葉がある。「魔女狩り」と「ディアスポラ」だ。二つともユダヤ・キリスト教文化から出た不吉な単語である。
魔女狩りは15世紀前後、中世から近代への変革期に優れた女性に対するコンプレックスと権力欲にとらわれた男性が働かせた集団ヒステリー事件だった。驚くべきことに魔女狩りは当時の知識人や神父、裁判官によって強行された。
魔女狩りの波は異教徒の侵入と宗教改革で分裂した状況下で広がっている。未来に対する不安と変革の時期に合理的な解決ができない状況で、まず敵をつくって犠牲の羊を通じて代理解消することで、民衆の心理的安定感を得たキリスト教が行った最も呆(あき)れ返る事件だった。
最近、韓国社会に突然、巫堂(ムーダン)(巫女)論争が広がっているのを見れば「魔女狩り」の中世に帰った感じがなくもない。合理的に未来を切り開くことができない男性権力の集団不安の反映なのかもしれない。
朴槿恵(パククネ)政府を退かせる最も合法的で正当な方法は国会の“弾劾”である。朴大統領も共謀疑惑を不当だと考えるなら、特検と弾劾を受け入れて、憲法裁判所の最終決定を堂々と受けてこそ、大小の疑惑からも解放されるはずである。
ろうそくデモで単に「下野」せよというよりは、是々非々を分けて過ちを正すことの方が結果的には合理的な民主主義の発展に資するだろう。
「ディアスポラ」は今の韓国のようにユダヤ民族が南北に分かれた北側のユダと南側のイスラエルが次々に滅び、ユダヤ民族がパレスチナ本土を離れて世界各地に散って生きることになったことを意味する。本国を離れ海外に散って暮らす“民族集団”を指したりもする。いま海外に散在する約500万人の海外在住韓国人も大部分ディアスポラの産物だ。
最近、ディアスポラという単語がしばしば登場するのは恐らく韓国に左翼と従北勢力が蔓延(まんえん)することに対する不安意識からだと見られる。実際に大韓民国でディアスポラが起こる確率は低いが、核兵器開発など北朝鮮の挑発が続くのを見れば、危機感は解消されない。
ユダヤ人には旧約聖書があるが、韓国人にはそれもないから、小さな国土であっても、それをよく守らなければならない。ここに神の意思があるのかもしれない。
(朴正鎮(パクジョンジン)文化評論家、12月6日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。