“脱北者3万人時代”に備えよ


韓国紙セゲイルボ

逆説的な統一時代到来を暗示

 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)が2011年に執権して以後、しばらく停滞していた北朝鮮住民の離脱が今年に入って増加傾向に転じ、“脱北者3万人時代”が目前に迫っている。

テ・ヨンホ

8月17日、亡命した北朝鮮のテ・ヨンホ駐英公使2014年11月、ロンドン。ビデオ映像より(AFP時事)

 最近の脱北者の傾向は北朝鮮体制を支えるエリート階層と海外労働者など中産層が大挙含まれる“移民型脱北”という点と、動機も経済的困難よりは自由に対する憧れに変化してきていることだ。

 北朝鮮は核兵器開発に執着しているが、体制弛緩と崩壊の警鐘が鳴っている。短期的には統制と監視強化で脱北を一時的に萎縮させることはできるが、中長期的には外交・経済的孤立が深まり、脱北者は増加して体制崩壊につながるだろう。

 周知のように北朝鮮の経済は配給経済が崩壊し、市場経済時代へ移った。現在、北朝鮮には全国的に383カ所の公設市場と、それ以上の非公式市場が運営されており、住民はすでに資本主義的思考をしているという。

 市場経済化以後、物質に対する所有欲が強くなり、与えられた現実に安住せずに未来を変えようとするようになる。これは北朝鮮の高位層エリートまでが加わった脱北ラッシュの最も直接的な原因で、今後、大量脱北事態の可能性を示唆する点だ。

 われわれは脱北者定着のための制度を再点検し、自由と人権を求めて来る北朝鮮住民を十分に受け入れる体系と力量を備えることが緊急な懸案となった。

 資本主義社会の味を知り始めた北朝鮮住民としては、万一中国が中朝国境での貿易統制を強化すれば、大量脱北事態をつくり出す可能性も大きい。報道によれば、政府が北朝鮮の急変事態に備えて、約2兆ウォンを投入して、10万人規模の脱北者を受け入れる「脱北村建設」計画などを準備中という。

 脱北者3万人時代というのは、逆説的に統一の時代が到来していることを暗示している。脱北者らが自由民主主義と市場経済体制の一員として、そして市民としての責任と義務を果たせるように、政治・経済・社会・文化的困難を解消することに統一政策の優先順位を置くのも忘れてはならない。

 一度ひびが入り始めた堤防はいつでも崩れる。国民が分裂した心を一つにし、北朝鮮体制の不安定化と大規模脱北ラッシュに備えて、徹底した準備が必要な時だ。

(柳永玉(ユヨンオク)国家報勲安保研究院長・国際政治学、10月24日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。