「期待」と「誤解」の間に 大統領選控え、潘基文氏の言動に注目
韓国紙セゲイルボ
“潘基文(パンギムン)旋風”が駆け抜けて行った汝矣島(ヨイド)が落ち着かない。
潘国連事務総長は30日、韓国を離れる際、「誤解がないことを望む」と述べたが誰も「誤解」とは思っていない。潘氏は6日間の滞在中に多くを口にした。すべての日程に記者が集まった。政治家の日程はメッセージだ。長い間の外交官生活、国連事務総長を2期10年務めている潘氏がこれを知らないはずがない。
「誰かが大統合宣言をし、率先垂範して、国家統合のために全てのものを捨てるという指導者が出てこなければと考える」
行事ごとに記者が追いかけて行き「待望論」を質問する。「ホ、ホ」と笑ったり、「申し上げる状況でない」とはぐらかした。大統領選出馬を決めたものではないが、出馬を支持する世論、与党の期待を裏切りはしないという意図と見える。
中央日報の世論調査では、潘氏の支持率(28・4%)は他の野党圏候補に10%以上も差をつけたトップだ。大統領選挙を取材する記者は、選挙1年前の支持率がどれくらい空(むな)しいものかを知っている。潘氏が本当に来年1月に出馬宣言をするのか、最後まで完走するのかは分からない。多分本人も分からないだろう。
重要なことは現在、彼より国民の期待値が高い政治家はいないということだ。彼が与、野、中道から等しく支持を受けるのは既存の政治家と違うという理由が大きい。
政界では潘氏の滞在日程がよく構成された脚本のようだったと評判だ。言い換えれば、既存の“政治文法”と大きく違わなかったということである。まず金鍾泌(キムジョンピル)元首相と慶北安東河回村訪問日程がそうだ。潘氏は非公開で会った金氏と大統領選挙関連の話はなかったといったが、真に受ける者はいない。30分間の単独面談それ自体で「忠清待望論」は解釈でなくファクトになった。
潘氏が慶北安東に留まった時間は3時間余りにすぎなかったが、政界は「忠清+TK(大邱・慶北)連合論」で揺れた。こういう地域構図に彼が言及した「国民統合」メッセージはそぐわないのだが。
米国ではトランプ氏が共和党候補として事実上確定し、民主党のサンダース候補が最後までヒラリー・クリントンを追跡するのは、彼らが既存政界と違ったメッセージを投げているからだ。来年の大統領選挙に挑戦するのなら、潘氏の準備されたメッセージは何かが気になる。今回の訪韓では「なぜ潘基文なのか」が分からないからだ。
(黄政美(ファンジョンミ)論説委員、6月1日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。