【韓国紙】今年も新年の辞なし
北朝鮮の金正恩総書記は今年も新年の辞を発表しなかった。3年連続だ。代わりに、朝鮮労働党機関紙『労働新聞』は昨年12月27日から5日間開かれた党中央委員会総会の結果を1日に報道した。「人民の福利のため、いっそう力強く戦っていこう」というスローガンを掲げた。「農業」と「農村」に143回も言及し、食糧難の解決に集中するとも語った。対米・対南メッセージもなかった。
金総書記は権力掌握後、ずっと肉声の新年の辞を発表してきた。2018年に「平昌(冬季)五輪参加」意思を示唆したのも新年の辞だった。その翌年には金日成主席と金正日総書記の肖像画を背景にして、壇上でなく執務室のソファーに座って新年のメッセージを30分間朗読した。人民服でなく洋服まで着て“正常な国家”のイメージを存分に誇示した。
雰囲気が急変したのは19年2月、ベトナムの首都ハノイで開かれた第2回朝米首脳会談が決裂した後だ。20年と昨年はそれぞれ全員会議の決定文と親筆の書簡で新年さに代えた。金総書記が口を閉ざした理由は何なのだろうか。対北制裁の長期化に伴う景気沈滞によって特に住民たちに伝える話がないためだとの分析が優勢だ。
新型コロナウイルス感染も原因だ。20年春の頃だ。当時、情報当局の高位関係者に会って北朝鮮内の新型コロナ感染の状況を尋ねたことがある。同関係者は「中国と接した国境地域を通して流入し、死亡者も多数発生したものと把握している」と伝えた。しかし、北朝鮮は依然、新型コロナの清浄国家だ。感染者が1人も発生していないとの主張を繰り返している。数百万人分のワクチン支援まで拒否したままでだ。
金総書記が昨年末の党中央委員会総会で「非常防疫事業は国家事業の第1順位に位置付け、わずかな緩みや手抜かり、隙もなく、強力に展開していかなければならない最重大事」だと強調したのは、そのような点でアイロニーだ。新型コロナ防疫を国家の最重大事に挙げたのは、危機感の発露ではないだろうか。引き続き国境を閉鎖して自力更生基調を維持していくようだ。
食糧難に加え、北朝鮮内の生活必需品の価格急騰は既に危険なレベルを超えている。金総書記が新年の辞を朗読する姿をこれ以上見るのは難しいかもしれないようだ。任期の間中、成果を自画自賛しながら新年の辞を続けてきた文在寅大統領と対比される。
(1月4日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。